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リセットボタン2

2012.05.31 07:33|Novels
「え、サンジ君? まだ帰ってきてないわよ」
 甲板上にガーデニングテーブルとチェアーをひっぱり出してきて優雅に午後のティータイムと決め込んでいたナミが、ほんの数時間前に出て行ったばかりのゾロの早い帰宅に少々驚いた顔をした。
 俺が早く船に戻ってくるとそんなに意外なのだろうか。
「あんた何しに街に下りたのよ」
「散歩」
 特に目的など本当に無かったのだ。
 ただ折角島に着いたのだから、ルフィまでとは言わないが珍しく新しい刺激を求めて未知なる土地へ足を下ろしたくなる気持ちは俺にだってある。
「で、散歩に行った割にはお早いお帰りじゃないの。よく迷わなかったわね」
 ゾロが船を出て行ったのは昼前だ。今は昼下がりなので散歩をして帰ってきたと言うには程良い時間のはずなのだが、常に迷子癖のあるゾロがそれをやってのけると何だかよくないことが起こる前触れかしら? なんて余計な心配をしてしまう。
 口に出しはしないナミの思考を読みとったかのようにゾロがイライラと頭を掻いた。
「それでクソコックはいつ頃戻ってくると言っていた?」
 話を最初に口にしたはずの本題に再び持って行く。
 ナミは眉を潜めて、手元のティーカップを唇に押し当てた。
「あんたがサンジ君のこと気にしてるなんて珍しいわね。何かあったの?」
 何かあったと言えばあったような、無かったと言えば無かったような。
 どう返答したものかと迷っていれば、ナミがゾロの手にある紙袋に気付いて急に目を輝かせた。
「あら、それってもしかして有名洋菓子店の袋じゃない?」
 この目敏さはナミ特有のものなのか、女性特有のものなのか。
 甘いものに目が無いと言う点では女性陣だけでなく、うちのクルーの中ではチョッパーも同じよう鼻が利くのかもしれないが、まさか紙袋1つでバレるとは思わなかった。
 店名の入った紙袋ではあるが、どこにも洋菓子店だなんて記述はない。
 だとすれば店名の方が、この島だけでなく全国的に有名なチェーン店だったと言う可能性は高い。
「もしかして、お土産? ゾロにしては気が利くわね。在り難く貰っておくわ」
 誰もそうだとは言っていないのに強引にそうだと決めつけて紙袋に手を伸ばしてきたナミからそれ守るよう、ゾロは一歩後ずさった。
 刹那。
「それは俺が買ってもらったんだ!」
 後ろの柱の陰から小さな子供が急に飛び出して来た。
 金髪で碧眼の、奇妙に眉が外側にグルグルと渦を巻いた男の子だ。
 誰かに似ているような気もするが・・・。
「買ってもらったって、ゾロに買ってもらったの?」
 急に飛び出てきた男の子とゾロの顔とを見比べるナミの視線に少々ゾロが気まずげな顔をした。
「そうだぞ! ロロ・・・ん? ロゾ・・・・・・あれ? ゾゾ・・・・・・なんだっけ? とにかくこのマリモに買ってもらったんだ!」
 いい加減俺の名前をちゃんと覚えろ。
 ・・・何でマリモはちゃんと言えてゾロと言う名は言えないんだか・・・と、舌足らずなガキにゾロは溜息を吐く。
「僕~、どこの子かな~?」
 ナミが完全に猫を被ったねこなで声で視線を子供に合わせてにっこりと笑顔を作った。
「俺、マリモの子!」
 金髪の男の子がナミに釣られたよう満面の笑みを浮かべる。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・あんた、いつ子供生んだの?」
「・・・・・・・・・・・いや、ガキ生めねえし・・・・・・」
 金髪の子供はいつの間にかナミの前からいなくなり、船の上を嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「まあ、そうよね・・・ちっともあんたに似てないし・・・どっちかと言ったらサンジ君そのまんまじゃない・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
 奇妙な沈黙が落ちる。
「うわー、すっげーーーな、この船の船首、ヒマワリだ!! かっこいいーー!!!!!」
 そんなはしゃぎ声が耳に届いた。
 ヒマワリじゃなくて、これ、一応ライオンなのよねーなんて呑気な突っ込みをしてる場合でもない。
「で、あれ、どうしたのよ?」
 あっちへちょろちょろ、こっちへちょろちょろ、元気のいい男の子だ。
「チンピラに絡まれてたところを助けてやって、服とその菓子買ってやったら妙に懐かれた」
 そもそも、ゾロが子供に服とお菓子を買ってあげるだなんてこと自体イメージに合わない。
「あんたが似合わないことするからよ」
 明日は嵐かしら・・・天変地異の前触れかもしれない。
「で・・・何で連れてきたの? 私達海賊だって分かってるわよね?」
「何でっつーか・・・・・・何も覚えてねえっつーから放っておくのもどうかと思って、チョッパーに診せたほうがいいんじゃねえかと」
 まあ、確かに自分でもそれだと連れ帰ってきたかもしれないが。
「それで、あんたが帰って来た早々サンジ君のことを聞いた理由は、もしかしてあれ?」
「おお。ドッペルゲンガーかもしれねえだろう。鉢合わせたら、あいつ死ぬぞ!」
 全くバカも休み休み言ってほしい。
「ドッペルゲンガーってのは本人そのままの形で現れるって聞くでしょう。あの子はサンジ君に似てるけど、どう見たって子供じゃない。それとは違うんじゃないかしら?」
「じゃあ、ありゃ何だ?」
「知らないわよ・・・」
 また沈黙が落ちた。




「うん、間違いないよ。血液型も身体データもサンジのものと一致する。完全に子供の体になってるのと、記憶が退化してるみたいだけど、やっぱりこれってサンジ本人じゃないかな? 少なくとも別人ってことはないと思うけど」
 ナミが急いで街にチョッパーを探しに出て物の数分で戻ってみれば、サンジにそっくりな、名前までサンジと言う名だったらしい子供は、すっかり船に馴染んでしまっていた。
「俺みてえにギアサード使ったんじゃねえか?」
 呑気に言うルフィにナミが拳骨を落とした。
「バカね。サンジ君は普通の人間でしょう! あんたみたいに技使って縮んだりしないのっっ!!!」
「推定年齢10歳前後ってところかしら?」
 バカなやり取りをしている間にも、ロビンが興味深そうにチビサンジをペタペタ手で触っている。
 学者として、奇妙なものにはやはり興味を惹かれるのかもしれない。
「はわわわ、綺麗なお姉さんに触られると、俺、緊張します」
「まあ、言ってることは確かにサンジ君だわね」
 ナミは呆れた息を落とした。何かアクションを落としていないと、やってられないからだ。
「特に身体的な異常は見当たらないから命の危険とかは無いと思うけど、元に戻るかどうかは原因がちょっと俺にも分からないや」
 大人が子供のサイズにまで縮んだ症例がどうのこうのとぶつぶつ呟きながらチョッパーが医学書を捲り続けている。
「ま、何か悪いものでも食べたんでしょ。少し様子見て戻らないようだったら、街でも調べてみるってことで、取りあえず御飯とか当分どうする?」
 肝心のコックが子供になった状態なのだ。
 流石に同じサンジはサンジでも、この子供に船のクルー分の食事の用意をしろ・・・なんてこと言えるはずもない。
「あ、俺、良かったら作りますよー。これでも見習いコックですし!」
 ドンと自信満々にチビサンジは胸を叩いてキッチンに駆けて行った。
「何と言うか・・・子供らしいような、子供らしくないような・・・・・・」
 流石に心配だったので、ダイニングに皆で身を寄せチビサンジの動きを見守ったのだが、確かに子供の頃からコック見習いとして働いていたとサンジの口から聞いたことはあったものの、この年で普通に完璧な料理を作って見せる。
 そりゃいつものサンジの料理に比べると味やら盛り付け方などは当然劣るものの、この船のクルーの誰が作ったものよりも美味いのではないかと言うものをチビサンジは器用に作って見せた。
 食卓に並んだ料理は大人顔負けである。
「どうだ、うめえだろう!」
 しかも、自信ありげにそう言ってくる様子など、そのまんまサンジである。
 ただ小さいだけで。
「感心したわ。あなた小さいのにすごいのね」
 ロビンが褒めるように頭を撫でれば、顔を真っ赤にさせて小さなサンジは後ろに跳び退いた。
「い、いえ、そんなこと・・・」
 照れてるんだか恥ずかしがってるんだかよく分からないが、褒められればやはり嬉しいんだろうことは分かるのに、そうされることにもしかしたら慣れていないのか反応に困った様子をしている。
「サンジ君も一緒に食べましょう」
「あ、いえ・・・あまりお腹空いてないので・・・」
 食卓に呼べばチビサンジは自分の作った料理には興味も示さず外に出て行ってしまった。
「何あれ・・・大丈夫かしら? お腹空いてないはずはないわよね? だって外で何か食べさせたわけじゃないんでしょう、ゾロ?」
 ナミが首を傾げる。
「ああ、あの菓子を買ってやったぐれえだ。いつまでも店の前にへばりついて動かなかったからな」
 その菓子も直ぐに食べるものだとばかり思っていれば、あのガキは食べずにただゾロがレジで商品を買うのを嬉しそうに、少し不思議そうに、見ていただけだ。
 ゾロが「食わねえのか?」と途中で聞いてみたが「勿体ないからいい」と返ってきた。
 勿体ないも何も、食うためにあるものだろうと思ったが、コックの考えることは大きくても小さくてもよく分からない。
「やっぱり居心地悪いのかしらね。本人完全に子供に戻ってるみたいだし、大人になってからの記憶が無いんじゃ行き成り海賊船は驚くわよね・・・」
 ナミが心配そうに、チビコックの出て行った扉を見据えた。
 

  
 

 
 少し気になって飯が終わった後、甲板上にチビコックの姿を探してみれば、チビは甲板の手摺りに凭れてぼんやりと海を眺めていた。
「飯、食わねえのか?」
 後ろから声をかけると、グリンと首を巡らせて直ぐ後ろにゾロの姿を見止めた瞬間、少しホッとしたような顔を見せる。
 ナミの言うよう、海賊船と言う雰囲気に少し居心地の悪さを感じているのかもしれない。
 こいつは恐らく俺達の知っているあのクソ生意気なコックであることに間違いはなさそうだが、そのコックも今は子供なのだ。
 俺がこれぐらいの子供の頃と言ったら、まだ村からも出たことがなく、近所の道場で剣術の稽古に励んでいた頃合いだろうか。
「この船、沈まねえか?」
 飯を食わないのかと聞いたはずが、何故か全く明後日な返答が返ってきた。
 縁起でもないことを言う奴だ。
「ああ、この船はちょっとやそっとじゃ沈まねえな」
「そっか・・・」
 また安堵したような顔だ。
 それが飯を食わないことと、どう関係があるのだろうか。
「お前、育ち盛りのくせに食わねえからこんなに細いんだろうが!」
 腕を掴んでみたら、足同様にやはり細くて簡単に折れてしまいそうだと思った。
 子供の腕とはこんなにも細いものなのだろうか?
 この船には今のチビコックと同じ年頃の子供が乗っているわけではないから比べることも出来ないが、この年齢の子供にしては少々肉付きが悪すぎるようにも見える。
「うるせー・・・いいんだ」
 気に障ったのか、ふいっと顔を逸らされた。
 何がいいのだかよく分からない。
「おい、それよりマリモ! あのロボットみたいな奴って何だ!!!!」
 拗ねたのかと思えば、チビコックは行き成りゾロの腹巻きをぎゅっと掴んできた。
 チビが指差す芝甲板のところでフランキーが食後のコーラタイムを満喫している。
「ありゃ、仲間のフランキーだ」
「仲間? でもロボだぞ! ビーム出るんだろう、ビーム!」
 反応が丸っきりルフィやチョッパーと同じだ。
 いつだってフランキーのオーバーアクションに騒ぎ立てるのは年少の男共だけで、コックは俺同様に然程興味なさそうにいつもその様子を眺めていたが、本当は興味があったのだろうか?
 あの透かした面の下でルフィ達と一緒に騒ぎたい気持ちを押し隠していたんじゃないかと考えると、何だか笑えてくる。
 ビームは出ただろうか? とゾロが真剣に考えていれば、ぎゃっと悲鳴を上げてチビコックがゾロにしがみ付いて来た。
 一体今度は何なんだと視線を落とせば、コックはガタガタと震えている。
「おい、マリモ・・・・・・あの骨って・・・・・・殺したのか・・・・・・」
 見ればフランキーの近くにブルックがいる。
「ああ、あれも仲間だ。怖いのか?」
 訊ねればブルブルと首を振るくせに、コックはゾロにしがみついたまま一向に離れようとしない。
 何なのだろうか・・・。
 この普段とのコックの差は。
「ヨホホホホ、私のこと呼びました?」
 しかも選りにも選ってブルックがこっちに近付いてきたものだから、コックはぎゃあ! と悲鳴を上げながらどこかへ一目散に逃げて行ってしまった。
「おい、あまり脅かすな」
「ヨホホホホ。いえいえ、あまりにも新鮮な反応なので面白くて。あのコックさんとは思えない程ですね~」
 全くだ・・・。
 それにしても、まだ子供とは言え、あまりにも見事な怖がりっぷりだったので、少し気になってゾロはチビコックの姿を追った。
 ダイニングに入ったところまでは見えたのだが、足を踏み込んでみれば、食事が終わったそこには誰もいない。
 確かにここに入って行ったように見えたのだが。
「おい、クソコック!」
 呼んでみるが返事も返らない。
 医療室側のドアから反対側に出てしまったのだろうか?
 そう考えゾロも医療室方向へ抜けようとした時だった。
 カタンと微かに椅子のズレるような音を聞いたのだ。
 まさかと思い視線を巡らせればカウンターの隅、椅子の間にすっぽりと嵌まり込んで丸まった小さな体を見つける。
「おい、テメエそんなところで何してやがる」
 ゾロの声にもチビコックは顔を上げない。
「おい!」
 少々乱暴に肩を揺すれば、思わずと言った風にあがった顔が歪んでいた。
 瞠目した目に涙が滲んでいる。
 ゾロは慌てた。
 確かに普段のコックは感情の起伏の激しい奴で、感情表現も豊かな奴だが、人前で滅多に涙を見せることはないのだ。
 しかも、俺の前であるなら尚更だ。
 そのコックが泣いていると言うことにも、更にこの状況では、まるで自分が子供を泣かしたような図になってしまっていることも、全てゾロを動揺させた。
「そんなに怖かったのか?」
 泣いた原因はやはりブルックとしか思えないが、いくら子供と言えどもそんなに怖がるようなものだろうか?
 チビコックはゾロの問いには頑なに首を振ったが、引き結んだ唇とは裏腹に目の方は感情を素直に表している。
 一向にチビコックが口を開かないのでゾロは痺れを切らして、もうこのまま放っておこう、どうせ相手は子供でもあのムカつくコックだと立ち上がりかけた時、ポツリと小さく声が落ちた。
「・・・お前等が食ったのか?」
「は?」
 一体何の話をしているのだろうか?
 振り向けばコックは膝を抱えこんでその膝に自分の顔を押し付けている。
「食ったからあいつ骸骨なんじゃないのか?」
「あのなぁ・・・どこの世界に仲間食うような奴がいるんだよ」
 ビクリとコックの肩が震えた。
「でも、ジジィは・・・・・・・・・」
 それっきりチビコックはまた口を閉ざしてしまった。
 ジジィと言うのはあのバラティエにいた鼻毛三つ編みのオーナーのことだろうか?
 こいつが仲間になった経緯をゾロは詳しくしるわけじゃない。何と言ってもルフィが勝手にあのレストランで気に入り、勝手に連れてきたコックだったからだ。
 ゾロが見た時にはコックはルフィの仲間になることを散々拒否していたので、まさか付いてくるとも思っていなかったのだが・・・。
 そう言えば、あまり興味もないことだったが、ルフィがあのレストランのオーナとコックのことについて何か話していたような気もする。
 昔、コックは遭難したことがあって、あのジジィは遭難時にコックを助けるために足を失ったとか何とか・・・・・・。
 食ったのか・・・? と言うことは、もしかして、そう言うことなのだろうか?
 体が子供の姿になって他のことも全く覚えていないものだとばかり思っていたが、子供の頃のある一定までの記憶はちゃんとあるのだろう。
 それこそ今の外見、10歳前後ぐらいまでの子供として過ごした時の記憶はそのまま今のチビコックにはあるってことか?
 そうなると、今のコックはその遭難した直後ぐらいのコックなのだろうか?
「あの骨は食われたんじゃなくて、元々ああなんだ。心配すんな。誰も食ったわけじゃねえ・・・世界にはいろんな生物がいるんだよ」
 ゾロとてブルックの生態を詳しく説明しろと言われても、今一分からないことが多い。
 今回コックが行き成り子供になってしまったように世界は不思議で溢れているのだ。
「本当か?」
 おずおずとチビコックが顔を上げた。
「ああ、本当だ」
 少し笑んでやれば、漸く安心したのかチビコックがへにょんと眉を下げる。
 安堵感で一杯の気の緩んだ顔は妙に可愛らしい。
「マリモがそう言うんなら信じてやる!」
 普段俺とは喧嘩ばかりしているあのクソコックが、こうして今、俺に懐いてしまっているのも、世界に有り触れた不思議の1つと言うわけだろうか?
 偉そうに言って立ち上がったチビコックがゾロの腹巻きを、それでも不安気にぎゅっと掴んできた。
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