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Asymmetry3

2011.07.14 13:31|Novels
Asymmetry3 (R指定。痛いです。ご注意ください)
 液状の何かを中にまで塗りつけられて直ぐにもう一度指を窄みに当てられた。もう一度押し込んでこようとする意思が見えるが、先程強引に指1本押し込まれた時の不快感が凄まじくて、それを思い出したせいか勝手に力が入ってしまったらしく、恐らく滑りを良くするための何かを丁寧に塗りこまれた割には、今度はなかなか入らない。
 何度も入り口を行ったり来たりする指に慣らしているのだろうか? とも思ったが、更に液状のものが追加された滑るような感触があって、それに乗せるよう再び指先をいれて来た。
 どれぐらい入っているのかは分からなかったが、そう奥までは入っていないように思う。それでも強烈な異物感にただ押し出そうとする力だけが強まる一方だ。
「力を抜け・・・このままじゃ入らない」
 露骨にそう言われるが、肝心のその力を抜く方法が分からない。男の俺をいつだって受け入れてくれた女性は凄いなぁ・・・と、こんな時なのにぼんやり思い、同時にこれしきのことで根を上げそうになる自分を酷く情けなく思った。
 少し諦めたようにふと息を抜けば、その瞬間に若干力が抜けたのか一気にギリギリの位置まで更に指を押し込まれる。指は何かを確認するように内部で押したり、動いたりしていたが、それから極端な行動に出てくる様子はなく、何故かそのまま数分放置された。
 俺は話す余裕すら無くなっていたので、ただ只管ベッドのシーツに顔を押し付けて苦痛を噛み殺していた。指を挿れられたままの変な感覚は慣れることもなく、しかも徐々に何故か具合が悪くなってくる。
 酒を少し飲みすぎてしまったのだろうかと思うほどに吐き気が込み上げてきて、腰と尻の間に重たい感覚があった。しかも、それには波があって、連続的に強烈な痺れを齎したかと思えば、緩慢に重さを増していく。
 ミルザムは指1本俺の中に押し込んだまま動きを見せない。ただ時々反対側の手で掴みこんだ俺自身にギュッと力を込め、絶頂を許しはしないと言う素振りを見せるのだが、その前にすっかり俺自身は萎え切ってしまってそれどころではない。
 そのうち頭がボーッとし始めた。
 眩むような感覚があり、貧血なのか眩暈なのか、とにかく酷く体中が冷たく急激に熱を失っていく。太ももの付け根から腰の間にピリピリとした痛みのような、痺れのようなものがあった。
 この時には俺はすっかり顔面蒼白になってしまい、寒さが体中を纏いガタガタと震えていた。それは怯えや恐怖から来る震えではなく、確実に俺の中の何かを刺激し、引き出した証拠だった。 
 体は酷く震えるのに、下腹部が疼くように勝手に反応していく。徐々に萎えていた場所が兆し始めサンジは愕然とした。しかし、ミルザムがそこを強く握りこんでいるのでそれはただ痛いだけで、快楽の捌け口がない。
 そうしているうちにミルザムはもう1本指を俺の中に押し込んできた。1本目程の衝撃はなかったが、無理やり抉じ開けられたそこがミシミシと軋むように痛む。相変わらず排泄感だけは強烈で、これ以上指を増やされようものならもう耐えられそうになかった。
 そう感じるのに本番すらまだの状態だと言う状況に途方に暮れた。
 受ける側の男は本当にこんなことをされて気持ちよくなれると言うのだろうか? ただ苦痛を刻んでいくだけの行為にしか思えない。
 しかも、ミルザム自身、まだ俺の中に挿れてはいないのだ。俺だけではなく、ミルザムの方もこれでは欲求を吐き出すどころではないのではないだろうか・・・と思うが、そんなサンジの思考は呆気なく打ち砕かれる。
 ミルザムはうつ伏せにさせていた俺を反転させた。指が入ったままだったので変な風に捻れて内部の壁を刺激し、悲鳴を上げそうになった。
 今まで顔をシーツに押し付けていたので俺の苦悶を宿した表情まではミルザムに見られていなかったのだが、それが明るみに出てしまう。すっかり蒼褪めて歯の根が合わないほど震えていたサンジの顔を見て、ミルザムは罪悪感を感じるどころか、酷く興奮したようだった。
 男同士で行為に及ぶ場合、肉体的な快楽よりも先に精神的な部分での快楽が圧倒的に早く興奮と快感を与えるのだとサンジはこの時初めて理解した。
 ミルザムに嗜虐性があるとは思わないが、俺が苦痛に耐えながらも受け入れようとする姿は酷く相手を煽り、快感になるらしい。こっちは反吐が出るような状況で何かと必死だと言うのに、やはりその姿すら相手を悦ばせるものにしかならないのだ。
 いつの間にか指は3本に増やされていた。
「もういいかな?」
 上からミルザムの声が降って来る。それはやたらと絶望じみて聞こえて、俺はギュッと目を瞑った。目を閉じてさえいれば、ただこの不快感と苦痛に耐えるだけでいい。顔が見えなければ、相手の表情の変化に一々怯えなくてもいい。
 ぐちゃぐちゃと中を指で掻き回され、もう脳は何かを考えるどころではなく只管混乱と恐怖を刻んでいた。内臓をかき乱される行為がこんなにも自分自身を深い底へと堕としていく。
 眦から涙が滲んだ。泣くものか・・・啼くものか・・・と思う心とは裏腹に子供のように泣きじゃくって、無意識に何度も何度も声を上げた。
 ついに指が引き抜かれてミルザム自身が押し付けられた時には、しゃくりあげるような声で小さく懇願した。
「もう許してくれ・・・・・・」と。
 だが、それで易々と許されるわけもなく、むしろそれすら相手の興奮を煽ったようだった。散々に時間をかけて慣らされたこともあり、俺のそこは容易くではないが、苦しいながらもしっかりミルザムを受け入れていく。
 体の震えが全身に巡り、ついには痙攣したように跳ねて、喉を引き攣らせた。
 何故か太ももの内側を触られただけで絶頂を促されるような状態になっていたサンジは、何度も何度も吐き出されていくものに、既に快楽を通り過ぎて苦痛しか感じなかった。
 元々律動させるにも向かない場所のせいか、ミルザムが動く度に俺はくぐもった叫びを漏らすことしか出来ずに、ミルザムが中にまで押し込んだ液状のものがグチャグチャと淫靡な音を鳴らし、その荒い息遣いに重なる自分の喘ぎを、暗い世界で聞いていた。
 内壁を何かが激しく打ち付けたような感触にサンジはビクリと体を一際強く跳ねさせた。中で相手が果てたのだと気付いたのは生暖かいものが太ももを伝い始めたからで、何もかもが気持ち悪くて、もう終わったのなら早くどいてくれ・・・と漸くそこで目を押し開いて、縛られた腕をギシギシと動かせば、ミルザムは一向に自分の上からどかない。
 まさか・・・と思ったが、更に行為を再開させようとしてくる様子に、これ以上はもう体も心も持ちそうにないと、初めての経験に何もかもがグチャグチャ状態だったサンジは涙が流れるのを止めない目で、再び懇願するようにミルザムを見上げたが、ミルザムはそんなサンジを一瞥すると、また動き始めた。
 律動は最初の時よりも強く、酷く、抉るように、掻き混ぜるように、激しく刻むように、傷つけるように容赦が無かった。
 せめて、この悲鳴じみた声を聞かせたくないと、口にシーツを押し込もうと横を向き、手が縛られているので口でシーツを食むように手繰り寄せれば、それに気付いたミルザムにあっさりとシーツを取られてしまった。
 しかも信じられないことに俺の足を折り曲げてきたかと思えば、そのシーツで太ももとふくらはぎをしっかりと固めて固定してしまう。足も閉じることの出来ない状態にされたのだと分かり、極限の羞恥にサンジは今度こそ暴れたが、腕を括っているロープがギシギシと音を立てただけで、しかも自分が暴れれば暴れるほど、中に入ったままのミルザム自身が内部をあちこちと刺激し、意識が飛びそうになった。
 このまま意識を飛ばしてしまえれば一番楽なのだと気付いたのはその時で、既に俺の思考は朦朧とし始めていたので、そうすることは容易かった。
 しかし、頬を思い切り叩かれてハッと目を開ければ、眠ることは許さないと言わんばかりのミルザムの顔があって、殴られたことによる痛みで少しはっきりとしてきた頭が再び覚醒を刻んでいく。
「もう嫌だ・・・ミル・・・ザム・・・・・・」
 サンジは掠れた声で必死にそれだけ声を絞り出した。嫌だと、何度も首を振れば、ふと律動を止めて伸びてきた手がサンジの頬をなぞっていく。
 そのまま目元を拭われた。今、叩かれたばかりの頬を慈しむように撫でられた。
 急に優しくなったミルザムは、俺を滅茶苦茶に抱いた人物と同じ人には見えなかった。俺は何をするでもなく、青い目でぼんやりミルザムを見上げたままでいたが、ふと、何だか今の状況が馬鹿らしくも可笑しくなってしまい、絶望なんかを感じる前にひとしきり笑ってやろうと思った。
 だが、苦痛を刻みすぎた体では変に歪んだ笑みになってしまったかもしれない。それでも懸命に強がるように笑おうとすれば、ミルザムが急に俺を抱きしめてきた。
 また何かをされるのだろうかと体を強張らせ怯えた俺に、ミルザムはその腕の中に俺を抱きしめたまま、その耳元で、それこそ懇願するように呟いたのだ。
「ミルザ・・・・・・と呼んで・・・・・・」
 こいつは何を行き成り言い出したのだろうか・・・と思いつつも、今自分を抱きしめている男が先程までの男とは違い、酷く弱弱しいものに感じて静かに・・・微かに震える声でその名を呼んだ。
「ミルザム?」
 すると、違うと首を振られる。
「ミルザ・・・だ!」
 訂正するように言われ、俺は言われた通りに呼んだ。
「ミル・・・ザ・・・・・・」
 するとミルザムは目を細めさせて、あの頃のように優しい顔付きで笑うのだ。
 ただ強引なだけの苦痛しか与えない行為は俺にとって何の意味も持たない殺伐としたものだったが、恐らくミルザムにとっては違うのだろう。
 俺はこの時そう思った。きっと、ミルザムは俺なんかではなく、俺に重ねた誰かとただ純粋に愛し合いたかったのだろう。
 気付かなければ良かったのに・・・とサンジは思った。気付いてしまえば、この男を憎めなくなる。少しでも情が湧けば、それは判断を誤らせるからだ。
 少なくとも俺は恩師であるゼフを見てそう思う。あの時、クソガキだった俺に情なんかを抱いたからあのクソジジィは大事な自分の足を失ったのだ。



 
 強固と薄弱、その両極端な位置でミルザムは常に揺れているような男だった。
 ミルザムに行為を強要されたその日を境に俺は俺に言い寄ってくるその他の男とも寝るようになったし、ミルザムとは当然のよう誘いをかけられる度に体を許した。
 そこに特別な意図は存在せず、ただ単純にどのみちミルザムに体をこのまま強要される日が続くのなら、それなりに行為に慣れておく必要があったし、いつまでも体が辛いままでは自分自身が辛いのだと言うことを知ったからだ。
 それにいつまでもミルザムの思う通りに掌の上で転がされているのは癪だった。最初に抱かれた日のように、あんな風に泣きじゃくって、嫌だと喚いて、叫んで悲鳴をあげる自分を酷く愚かだと思った。
 それを誰かの目に見せるなど、自身の弱さを見せているのと同等に恥ずかしかったし、耐えられなかった。
 だから、何をされても体が耐えられるように、何を求められても心を衰弱させないように、俺は男に抱かれると言う行為に慣れる必要があったし、元々あった噂を本当のものにするだけのことでもあったのだ。それは背徳行為なだけに、考え方を1つ変えれば、また少し大人に近づいた証拠なのではないかとも自分に言い聞かせた。
 不特定多数の男と行為を適当に重ねるうちに俺の体はその行為自体に慣れていったが、誰一人として俺自身を優しく扱う奴はおらず、俺は男同士で行う関係は甘さも優しさも含まない、所詮は処理だけを求めた作業的なものなのだと徐々に理解していったし、それを疑いもしなかった。

 だからこそ、あの時のように半ば自暴自棄になってやけくそぎみにゾロに体を許した時、自分から誘いをかけたにも関わらず、仲間であるその男が、強引な中にも見せた、不器用な優しさが俺には酷く不可解で、居心地が悪くて溜まらなかった。
 それが何なのか最初は分からなくて何度かそれを確かめるように行為を重ねたが、体を併せる度に滲んでいく甘さとか優しさとか、あるいは愛情のような俺の知らない、言葉に言い表せないものが徐々に膨らんでいき、俺は酷く混乱していたのだ。
 最初から俺は相手の愛しさの上で、好きだと言うことを確かめ合う行為としてある、男同士の関係を全く知らずにいたのだから、当然と言えば当然だったのかもしれない。一方的な強要しかなかったその行為に、違うものを与えられること。
 それが、あの時ミルザムが俺に唯一与えることの出来なかったものなのだろう。
 これを自覚してしまった時、もう戻れはしないことにも同時に気付き、何だか馬鹿らしくも、子供のように泣き喚きたくなった。
 そんなどうしようもない扱い慣れない、それは今の俺が覚えている限りの最後の感情だった。



 ミルザムはどうしてか行為の度に確認のように俺が置かされた現在の状況を突きつけた。それは行為に嫌気がさして俺が逃げないように釘を刺していたのか、あるいはそう俺に言い聞かせることで、自身の目的を崩さずにいようとミルザム自身が耐えていたのかはよく分からなかった。
 何より俺はミルザムの意思を探り、その根本的なところにある暗い色に気付きつつも、そんなミルザム自身を救う術を何も持ち合わせていなかったのだ。ただ、あの時の俺には潔く体を差し出すことしか出来ず、どんな道具を使われても、時に激しく殴られ行為自身が狂気の沙汰に及んでも、自ら望んで行為に慣れることを目的とした不特定多数との情交で身につけた、どうすれば自分が辛くならないか、早くこの無意味な行為を終わらせることが出来るのかと言った、ただ終わらせるだけの技を駆使して、1日1日を乗り切っていくことしか出来なかった。
 俺は最初にミルザムに抱かれた日以来、すっかり行為に慣れた熟練者面をして、誰との行為の最中でも決して声は出さなかった。懸命に耐えて、ただ人形のようにそこに在った。ただ、それでは相手の感情を逆撫でし、余計に扱いが酷くなることに気付いた時には、自ら腰を振ってみたりもしたし、男のものを咥えてみたりもした。
 人はその時の環境に合わせて、どんな状況に置かれても生き抜いていけるように体が勝手に順応し始める。
 それは10歳の時に経た飢餓体験後、普通ならば助からない状態だった俺が奇跡的に85日間の遭難を経て救助され回復した時に、俺を診た医師が「よく頑張ったね」の一言と共に教えてくれたことだった。
 大人の体力ならまだしも、85日間の遭難と言うおよそ3ヶ月にも渡る期間は到底子供では生き抜いていけるものではなかったらしい。そして、子供時代の3ヶ月間と言うものは大人になってからのそれよりも、酷く長く、また貴重なものだ。
 その期間にまともな食も口に出来ず、精神的に追い詰められていった俺に何の障害も残らないはずもなく、俺は医師が淡々と説明する言葉をただゼフの横で聞いていた。


「俺はさ、オービット号に乗ってたんだよ。お前と同じで奇跡的に助かったうちの1人なんだ」
 その日もいつものようにミルザムに誘い出されて抱かれていた。場所は最初に行為を行ったレストランのこともあったし、それ目的のためだけに存在する連れ込み宿だったりもした。
 時にはミルザム自身が身を寄せている邸にも連れて行かれたりもしたが、俺は決してバラティエ内にある自分の自室にあいつを誘いこんだことはない。
 あの海上レストランバラティエはジジィにとっての夢であるように、俺にとっても聖地のようなものだった。そんな場所を他人に踏み荒らされたくなどはない。
 ミルザムがいつもと同じように突きつけていく事実を俺はその日もぼんやりと聞いていた。
 ミルザムが過去の話をし始める時、必ずと言っていいほど覗くちょっとした儚さとか懐かしさとか、愛情とか憐憫と言ったものがサンジには不憫でならなかった。同時に、こんなことをされた今でもミルザムの口から当時のオービット号のことを聞けるのは矛盾して嬉しくもあったのだ。
 ただ、お互いにあの時のことは思い出して口にしても、あまり楽しいものではないことも確かだ。
「お前はさ、折角生き残ったんだからどう在っても生きなきゃならないんだよ、分かるか? サンジ。俺とお前を残してあの船に乗っていた奴等は皆死んだんだ・・・皆・・・な・・・」
 あの事故を思い出させるようなことがミルザムの口から紡がれる度、俺は意識しないようにしながらもどこかで体が緊張を刻んでいくのを感じていた。居心地が悪いと感じる。それでも強がるようにキッと自分の上に圧し掛かったままのミルザムを見据えてやった。
 すると、やはりその態度がそそるらしく、クスリと馬鹿にされるよう笑われてしまう。
「お前、昔から生意気でさぁ・・・そう言うとこ変わってない・・・・大きくなったよなぁ、本当に」
 もう何度聞いた言葉かも分からない。それでも不快感はミルザムが同じ言葉を何度も何度も口にする度に大きくなって、サンジは思い切り頭を撫でてこようとした手を叩き落してやった。
 しかし、ミルザムに動じた様子はなく、むしろ楽しげだ。
「子供だろう? まだ君は・・・どんなに大人ぶったってその発育の遅さじゃ、そう見えたって仕方ない。それに、形だけ大人ぶってみせたところで、君はこういうことを知らないだろう?」
 嘲るような笑みと共に再び下半身に手を寄せられる。バッと反射的に身を引いてしまえば、今度こそ露骨に笑われてしまい、慌てて強がる素振りを見せるが結局どんなに強がってみせたって、ミルザムにとって俺は子供でしかないのだろう。
 クソジジィにとって、いつまでも俺がチビナスでしかないようにだ。
 一々俺のトラウマを刺激してくるミルザムに唾さえ吐きかけてやりたい気分だ。
 最近、俺が最初に抱かれた日ほど素直に悲鳴や泣き声をあげないことを、面白くなく思っていたのかもしれない。ミルザムは急にその日、何だかよく分からないことを言い始めた。
 丁度雲行きが怪しく夕刻あたりから強い雨が窓を叩き始めていた。港の漁師が嵐が来ると言っていたことをふと頭の端に思い出しながらも徐々に強くなっていく風雨にギュッと目を閉じれば、それに気付いたらしいミルザムが優しく頬を撫でてくる。
 この頬を撫でる仕草は、あの事故で失った恋人だと思しき女性にミルザムが頻繁にしていたことなのではないだろうか? その一瞬だけミルザムの目が優しげな形に細められるからだ。
「君は、嵐が怖いんだね?」
 しかし、急に突きつけられた言葉にビクリとサンジは肩を強張らせた。今まで誰にも悟られたことはなかった。それは、一緒にあの時遭難したゼフにでさえもだ。
 なのに、どうして気付かれたのだろうかと動揺を刻んでいると、窓の外が明るく光り、稲妻が走ってバリバリと空を割くような音を轟かせた。ここは港に近い宿なので海の荒れた音がここからでも耳に届く。
「違う・・・怖くない・・・・・・」
 自分でも子供っぽい言い方になってしまったのは分かっている。それでも思わず目を腕で覆い隠し、耳を塞いでしまいたかった。
「あの時、嵐が船を襲ったからかな?」
 言われて、必死に違うのだと首を振る。子供の頃ならまだしも、俺はそれなりに大人に近づいている。発育の悪さが何だ・・・チビナスが何だ・・・俺はあの頃からしっかりと成長していて、あれからもう4年も経ったんだ・・・。怖いわけはない、そんなもの。
 俺自身の夢はあの頃と変わらない、グランドラインにいつか出て、あのクソジジィも夢としたオールブルーを見つけることだ。そんな俺がこんな嵐1つ怖がっていて、どうして海に夢を馳せることなど出来るのだろうか。
「大丈夫だよ・・・」
 優しく言われて余計にサンジは身を縮みこませた。そんな姿を見て、ミルザムは優しくサンジを抱きこんでくる。
「それにね、サンジ。いいことを教えてあげようか? あのオービット号が巻き込まれた嵐・・・一体誰が呼んだんだと思う?」
 睦言のように耳元で囁かれてサンジは目元を覆っていた腕を解いた。その青い瞳でミルザムの顔を瞠る。何かを感じとったのか、その綺麗な青は徐々に驚愕と絶望を映していく。
 それを濃く焼き付けたまま砕いてしまえばいいのだろうか・・・とミルザムは愉快でならなかった。
「あれはね・・・君がやったんだよ」
 甘美な歌を聞かせるように、ミルザム自身の絶望とサンジ自身の絶望の両方を纏めて縛り付けていく。
 喜びには哀しみを。幸福には絶望を。
 喜びも幸福も知っている少年に、哀しみも絶望も揃った。あと残る1つは何だと言うのだろう?
 考えながらもミルザムは容赦なくサンジに事実を突きつけていく。一層その儚さに壊れてしまうのではないかとミルザムは思ったが、体を抱く行為も事実を突きつける言葉も止めることはしなかった。
「だから君は僕のものになるんだよ。君さえ抵抗しなければ、悪いようにはしない。赫足の身も約束どおり保障しよう。君もこれ以上罪を重ねたくはないだろう?」
 絶望が降って来たような顔だと、この時ミルザムはまだ自分にとって見れば幼い金髪の少年の線の細さにそう思った。
 ミルザムは少年のこの顔が一番綺麗で美しいと思った。






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 後半部分はいつぞや、サンジが夢で見ていた内容の一部です。若干変えたけど;
 しかし、ネチネチネチネチ書いてすいません^^;
 ゾロのことは、若干今回・・・サンジの気持ち的なものを組み込みました、一応。
 全体的にこの章はR指定で、痛い展開にしかならないです。はい・・・。
 書いてる方は楽しいんだけどねー(え?
 
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