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うたかた21-5

2012.02.04 22:25|Novels
 アクアリウムバーの水槽の前でサンジはジッと何かを眺めていた。
 ゾロが室内に入って来た気配には早いうちに気付いていたのだろうが、身動き1つせずに、ただ限られただけの空間である水槽に真摯な眼差しを向けている。
 何をそんなに熱心に魅入っているのだろうか?
 魚がほとんど入っていない水槽を見るよりは、海の中を折角進んでいる船だ。
 甲板上から見上げる光景の方がよっぽど、このコックにとっては夢のようなものだろうにと、何となく腑に落ちなく思う。
 ゾロが横に立つと漸くサンジは視線を水槽からゾロに移した。
「何の用だ?」
 自若としてこっちには何も用はないとばかりに聞いてくるサンジにハンドクリームを渡そうとすれば、露骨に怪訝そうな顔をされてしまう。
 しかし、ロビンから預かったことを説明してやれば、直ぐに思い当たった様子で手を出してきた。
 ハンドクリームの瓶を手渡す際に指先同士が微かに触れる。
 チャンスとばかりに、ゾロは今度こそ逃がしてしまわないようサンジの腕を引っ張って、自分の中にその体を閉じ込めた。
「テメエな・・・これ狙ってやがったのか?」
「ああ、そうだ。テメエは俺に触れてこねえからな。それなら触ってもらうように仕向けるしかねえだろうが・・・」
 サンジが大きく溜息を吐いたのが、上下した肩の動きで分かる。
 きつく抱き締めているのでその表情は見えないが、動揺した様子は無い。
「そんなに俺に触りてえのか?」
 訊ねてくる声にも焦りや怒りの色は見られなかった。
 過度なスキンシップがあまり好きではないらしいコックにしては珍しく、ゾロの強引な手段を前にも泰然としている。
「ああ、触りてえな」
 ゾロの応えにサンジがもう一度溜息を吐いたのが、やはり分かった。
「まあ、仕方ねえよな・・・2年もお預けだったわけだし・・・。だけど、今はこれで我慢しろ・・・な?」
 どこか、子供に言い聞かせるような甘く優しい声でコックが言う。
 その直後にチョンとままごと遊びのような、触れるだけの軽いキスをコックがしてきた。
 再会時にもコックがしてくれた挨拶のようなキスと何も変わらない、二度目のキスだ。
 深く絡み合うわけでもない。ただ、本当に子供を宥めるような温度で、何かを誤魔化すように惹きつけて行く。
 不意打ちのようなコックの行動につい掴んでいた腕を放してしまいそうになったが、油断した隙にまた逃げられそうな気がして、ゾロはそのままきつく力を篭める。
「テメエ何を隠してやがる?」
 確信した。
 俺が可笑しいんじゃない。やはりコックの方が可笑しいのだ。
「別に何も」
 平然と返すサンジの腕を更に強くゾロは握り締めた。
「じゃあ、何でテメエに触れねえんだ!!!」
「そんなの俺の方だって聞きてえぐらいだっつーの。まあ、そのうち元に戻るだろう・・・・・・・・・・手、離せよ・・・」
「離したらテメエにまた触れなくなる」
 あまりにバカ正直すぎるゾロの言い分に、ふっとサンジが表情を緩めた。
「仕方ねえな。じゃあ、触りたい時は言え」
「言ったら触らせてもらえるのか?」
「変態くせえ言い方すんな。善処するだけだ。毎回触らせてやるわけじゃねえよ」
 遊びのような軽いキスの、その先をゾロとしては当然期待したのだが、薄々予想していた通り、サンジはそれだけ言うと直ぐにゾロの手を振り払ってしまった。
 逃げられてしまわないよう、それなりにコックの腕を掴んでいた手には力を篭めていたはずだが、サンジはそれを難なくすり抜けたのだ。
 ゾロはもう一度サンジの手を掴もうとしたが、コックの手が自分の手から離れてしまった後では、掴もうとしたはずの手はやはりコックの体を通り抜けてしまうだけだ。
 こうなってしまったら、ゾロにはもうどうする術もない。
 軽く触れ合うだけのキスでも、できただけ儲けものと思った方がいいところなのかもしれない。
 サンジはもうゾロには興味を失った様子で、視線をはずすとまた水槽の中を熱心に見始めた。
 海水を入れた水槽。
 室内を覆う広い水槽は鮫なども入れることが出来る程の、他ではなかなかお目にかかれない立派なもので、2年前は渡ってきた海の魚達で賑やかに埋め尽くされていた。
 だが、今は静かなものだ。
 空っぽなわけではない。
 コックがあの青い魚を水槽内に入れたはずだから、たった一種類のそれだけはこの水槽のどこかで泳いでいるのだろうが、これだけ広いと、それがどこを泳いでいるのか探すのに一苦労するぐらいだ。
 ゾロはグルリと水槽を見回して、あの青い魚を探してみたが、直ぐには見つけることが出来なかった。
 海水の青に、それと似たあの青い色で溶けられてしまうと余計に見つけにくいのだ。
 目の前のこの金髪なら直ぐに見つけることが出来るのに・・・と、思わずよく手入れの行き届いた柔らかそうな金髪に手を伸ばしてみたが、やはりその髪の一房ですらゾロの手は触れることが出来なかった。
 その影響だろうか?
 金色の髪の、その端が僅かに、一瞬消えかかっているように見えたのは。
「さーて、俺は飯の準備すっかなー」
 暫く水槽を眺めていたサンジだが、時間を思い出したのかクルリと踵を返す。
 コックを務めているサンジに与えられる自由な時間は案外短い。
 せいぜい煙草を一本吹かすほどの間でしかなかったのは、いつものことだ。
 その短い時間に水槽をぼんやり眺めている姿が見れたのもやはりいつものことで、今のコックの行動自体にも特に不自然な点はないように思う。
 だが、甲板に出れば海の中を進む船の中なのだから、水槽の限られた海ではなく、本物の広い海の世界が見れるだろう。
 それを何故敢えて、こいつはこんなところで水槽を見上げているのだろうか?
 結局水槽の中で泳ぐ青い魚をゾロは見つけることが出来なかった。
 これでは何も入っていないのと同じだ。
 やはりたった数匹程度入っているだけでは、何も入っていないのと変わりない。
 釣りがしてえなぁ・・・・・・。
 ふと、ゾロはそんなことを思う。
 そうして沢山いろんな魚を釣り上げれば、こいつがこの水槽を見上げていても、こんなにまでも不自然に寂しい気持ちにはならないだろう。
 空っぽに近い水槽を眺めているコックの横顔が、水槽のガラスの境界を隔てた海の世界にそのまま溶け込んでしまいそうに見えた。
 自分すら、今の水槽を見ていると、どことなく物足りないと感じるのだ。
 この水槽が沢山の魚で埋め尽くされてしまえば、2年前にあった、水槽を見ながら楽しげにするコックのあの横顔がまた見れるのだろうか?
 今のコックの横顔は、見ていると奇妙な寂寥感に襲われる。



 釣りがしてえ・・・・・・・・・。 

 





 サンジがキッチンに戻れば、ロビンの姿があった。
「ロビンちゃん、どうかした?」
「ええ、お茶を貰おうかと思って」
「ああ、ごめんね、直ぐにお湯を準備するから」
 この時間帯はキッチン内に篭っていることが多い。なので、俺がいるものだとばかり思ってロビンちゃんもここに足を運んだのだろう。
 ほんの僅かな、息抜きと呼ぶには少々足りないぐらいの休息時間だったが、女性がお茶を欲しいと思った時に、直ぐにその要求を呑んでやることが出来なかったことが悔やまれる。
「少しは元気出たかしら?」
「え?」
 お湯を沸かそうと薬缶を手に取った瞬間に、ヌッと床から飛び出した、知らなければ一種の怪奇現象とすら思えてしまう手の群れにその行動を遮られてしまった。
「ちょっと元気なさそうに見えたから。いいわ、お茶ぐらい自分で淹れるから座っておいて」
「え、あ、はい・・・・・・」
 どうも、今のロビンちゃんの言い分だと、アクアリウムバーでの自分とゾロのやり取りを知られているようなニュアンスが見える。
 女性の気遣いを無碍にするわけにも行かず、サンジは言われた通り薬缶をロビンに渡すと自分はテーブルの椅子をひいて腰を据えた。
 シャボンディ諸島から出港した時に、女性耐性が仲間達と離れ離れになってしまった2年ですっかり失われてしまった自分は、興奮の最中、少々血を流しすぎてしまったのだ。
 当然チョッパーの的確な処置やリハビリの成果で、今はそう支障もないのだが、あれだけ血を失った後なんだから寝てろだ何だとチョッパーが煩く言うものだから、ロビンちゃんに気を遣わせてしまったのだろう。
 本来ならお茶を用意するのも自分の仕事のはずなのだが、その仕事を奪われてしまったのでは、サンジにはロビンがお湯を沸かす後姿を見守るしかない。
 女性の嫋やかなラインを視線でなぞる。
 見た目にも柔らかそうで、些細な仕草の1つ1つ、指の動きのそれまでもが優美で見惚れてしまう。
 綺麗に長く伸ばされた黒髪が作業の流れに合わせるようゆらゆらと揺れる様が、また何とも言えなくいい。
 やはり女の子はいいなぁ・・・と思う。
 それなのに何が悲しくて俺はあんなむさくるしい筋肉マリモとそう言う仲になっているんだか・・・と、今更のことを考えた。
 また鼻のあたりがムズムズしてきた。
 どうも女の子がいる生活にまだ慣れない。
 それだけ2年の時は長い。
 一緒にこの船の仲間達と旅をした時間よりも、あの悍ましい島での2年間の方が期間的には実質長いのだから仕方無いのかもしれない。
 それでも、仲間達と離れた2年よりも、こうして皆が揃ってからのこの数日間の方が、やはり身に染みて自分の性に合い、嬉しく、楽しく、気持ちを持ち上げる。
 出会ってまだそれほど経っていなかったことが信じられない程、自分はもうずっとずっと長く、ここにいる仲間達と一緒に旅をしてきたような錯覚さえ起こす程だ。
「ハンドクリームは受け取ったかしら?」
 つい郷愁のような気持ちに浸ってしまっていれば、ロビンちゃんが声をかけてきた。
「ええ、ゾロの奴が持ってきました」
「塗ってもらった?」
「え?」
 首を傾げた刹那に、ロビンがお茶を目の前に差し出してくる。
「少し温まるわよ」
 ニコリと微笑まれて、続けるはずの言葉をつい失ってしまった。
 いつまでも見惚れていたくなる微笑だ。ついついボーッとしてしまうのは、また鼻血が噴き出す前兆だろうか?
 ロビンが向かい側の席に腰を下ろすのを待って、サンジはロビンが淹れてくれたお茶に口をつけた。
 少し体が冷えていたのかもしれない。
 喉元を通って行く熱いぐらいの温度が、心地よく滲むように喉を潤していく。
「ロビンちゃんが、ゾロにハンドクリームを渡したんですね。どおりで、ゾロの割に気の利いた行動だと思った・・・・・・」
 ああ言うやり方はゾロらしくないとは気付いていたのだ。
 大方仲間の誰かが絡んでいるのだろうとは思ったが、ウソップやチョッパーあたりを予想していたので、少々意外だった。
「うふふ。好きな人に触ってもらえないのは、辛いんじゃないかしらと思って」
 ロビンの言葉に思わずグッと咽そうになったところを、サンジは寸前で何とか堪えた。
 どうやら完全に見抜かれているらしい。
「ロビンちゃんには敵わないな~」
 恥ずかしいとは思うが、不快な気にならないのは、ロビンちゃんが変に茶化すような相手ではないと知っているからだ。
 この船の中では誰よりも聡明で、大人で、いつだって冷静に皆を支えてくれている。
 ティーカップをテーブルの上に置いてサンジは自分の手を見据えた。
「ロビンちゃん、俺の手を触ってみてもらえる?」
「うふふ、チョッパーに見つかったら怒られるわよ」
「大丈夫ですよー。リハビリしましたし、もう鼻血は噴きませんってば!」
「本当かしら?」とロビンちゃんにしては珍しくからかうよう笑って、サンジが差し出した手に、その手がソッと触れた。
「触れるわ」
「ですよねー・・・・・・」
 感触もある。温度も伝わる。
 可笑しな点は何もない。
 やはり、ゾロだけが俺に触ることが出来ないのだ。
「もし、あの魚を食べてしまったんだとして、それで可笑しな現象があるのなら、巷で言われている分には、あなたの不安が映し出されてるってことになるはずだけど」
 幾らうまく隠していたところでこの人には気付かれているんだろうなと思っていたところを裏切らず、ロビンは直球だった。
「あー、やっぱりそこまでバレてましたか・・・。でも、俺は特に不安なんて・・・・・・・・・」
 食べた人の不安をそのまま映してしまう魚。
 報われない恋をしている人の・・・・・・と言う部分は敢えて触れないようにしておこうとサンジは思う。
 報われないと言うのなら、同性である時点で分かりきったようなものだ。どちらかに好きな女性が出来たら、この関係は呆気なく破綻する。
 女性の柔らかさもなければ、魅惑的な凹凸もなく、何かを生み出すことも出来ない。
 所詮、俺は女にはなれやしない。
 声を出せない人魚姫の恋が結局報われることのなかったように、結びつくのに必要不可欠な要素を欠いた俺達が繋がる意味など、どこにあると言うのだろう。
「きっとあなたが気付いていないだけで、あなたは心のどこかで何かを不安に思っているんじゃないかしら?」
 一瞬の暗い思考を見抜いたよう、ロビンが言う。




 何となく落ち着かなくて。
 体の奥深くで何かがざわつくように、呼ばれるように、目が覚めた。
 眠れない夜には慣れている。
 2年間、逃げ続けた日々。
 少しでも眠ろうものなら、あの悍ましい者達が襲い掛かってくる。
 だから、眠りも浅く直ぐに目覚めてしまうことなど、そう珍しくはない。
 だけど、ここはあの悍ましい島ではない。今となっては自分の拠り所となってしまったサニー号の中だ。
 だから、あの時の常に切迫した緊張を強いられた日々の中にあったものとは違う。
 これは、不安だろうか?
 漠然とそう思うが、恐らく言葉は正しくない。的確な表現がそうと言い表すしか、見つからなかった。
 ただ、何かに急かされるよう、呼ばれるままに、サンジはこっそりと転がっていたボンクから降り、男部屋を抜け出してアクアリウムバーへ足を運んだ。
 小夜の更けた静寂だけの時間帯に、当然バーにいる者は無い。
 皆、寝静まっているのだ。
 そんな中でサンジは何か音を聞いた。
 弾けるような、溶け込むような、静かな羽音のような、漣のような、そんな音だ。
 その音に誘われるよう薄暗い室内を見回す。
 流石に電気を付けなければ、何も見えない。
 壁探りに灯りのスイッチを探していれば、ボウっと急に前方が明るくなった。
 煌びやかな明るさでもなければ、唐突な目映さでもない。
 滲むよう、仄かに、日溜りが徐々に濃くなっていくような緩慢さでそれは広がっていく。
 何だ? と思い、サンジはその光のようなものに近付いた。
 光は水槽の中で発生している。
 ぼんやりと燐光のように蒼白く光って、次第にそれは白くなっていく。
 この水槽の中に入っているのは、自分がシャボンディで買って来たあの青い魚だけだ。
 水槽のガラスに顔をつけるようにして、魚の存在をサンジは探した。
 水槽の中は青い光と、白い泡のようなもので埋め尽くされている。
(この魚もね、死ぬ時には泡になって消えちゃうのよ)
 ロビンちゃんの言っていたことを思い出した。
 これはあの魚の最後の光だ。
 最後に海を照らす夜光虫のように、全てを青く染める光を放ち、その存在は泡となって消えてしまう。
 綺麗だった。
 同時に酷く物悲しい気分になる。
 散る直前にその花弁を発光させる花だってあるのだ。当然死ぬ間際に綺麗に輝く魚だっているだろう。
 バケツに移した時点で、もう大分弱ってしまっていたのだ。
 魚は陸にあげられた時点でかなりの体力を消耗してしまう。地上で生きることに慣れていないのだ。
 それだけに限らず、行き着く先すらないような広大な海で過ごしていた日を、急に狭い水槽の中で過ごす日に変えられてしまったことで感じるストレスは計り知れない。
 悪いことをしてしまったと思う。
 こんな風に泡になって消えてしまうぐらいなら、ちゃんと料理して食べてやれば良かったのだ。そうすれば、人の血肉となって生き続けることも出来ただろう。
 人の手に捕えられた魚なのだから、尚更。何も出来ないまま、この水槽の中で朽ちていくことは、魚達にとって本意でもないはずだ。
 徐々に光は薄くなっていく。
 漸く捉えることの出来た魚の姿は、今までと変わりない日常を崩さない。
 狭い限られた海であるにも関わらず、アクアリウムバーの水槽の中を無我夢中で泳ぎながら、尾鰭の方から静かに、その存在を泡へと変えて消えてしまった。
 ついに、最後の微光までもが消えて、室内はまた元の暗闇に戻ってしまう。
 水槽の中には何もいない。
 酷く寒い。
 深海の温度。
 地上の夜よりも更に深い闇を伴う、漆黒の夜。
 あの魚が何故、オールブルーと呼ばれていたのかが分かった気がした。
 死ぬ直前に放つあの光の色だ。
 輝かしいブルー。
 全ての海に集められた日の光を海色に染め上げて統合したような。海のどこもかしこもを。それは光の届かない深海ですら等しく、あの青い色で染め上げてしまうのだ。
 空っぽの水槽にサンジは手を触れた。
 あの賑やかだった2年前の水槽を、やはり酷く恋しく思う。
 水槽に触れていた手の、その指先が消えていた。
「魚を食べても泡になって消える例ってのは、ロビンちゃんも知らないって言ってたしなー・・・そう言う言い伝えもないはずだけど・・・・・・」
 食べた人の不安をそのまま映す魚。
 問題なのは、ゾロが俺に触れないことではない。
 こうして俺の体が徐々に消えかけていることだ。
(あーあ、俺も泡になって消えちまうのかね~)
 呑気に考えれば、ふと、泡になって消えてしまった人魚姫は消えてゆく時に何を考えていたのだろうかと気になった。
 何を想い、どんな気持ちで泡となり、海へと静かに還って行ったのだろう?
 不安。
 自分にとってのそれは何を指しているのだろう?
 消されていく、不安。
 脳で繰り返される同じ場面。
 仲間達が次々と消されていく。
 自分は何をやっているんだと、悔しくて、悲しくて。自分の無力さをあれほど嘆いたことはなかった。
 水槽のガラスに映しだされた自分の顔は情けないぐらいに酷い歪みを持っていた。
 ああ、そうか。俺はまだあの時のことを、きっとどこかで引き摺っているのだ。
 見据えた自分の手が、指先だけではなく丸ごと、暗がりの中でその存在を消していた。
 腕が消えるのはいつになるだろう。
 他人事のように、考えた。








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 サンジ版人魚姫のような展開になってきましたが、ゾロは釣りがしたいと考えています(笑)
  
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