スポンサーサイト

--.--.-- --:--|スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Cyanos2

2011.07.06 18:12|Novels
Cyanos2
 ルフィがどこかへ行ってしまったので、結果としてゾロとウソップだけがその場に残された。
 当然のように空気は気まずいままである。ウソップがどこから俺とルフィの会話を聞いていたかは知らないが、最後にルフィが俺に突きつけた言葉で事のニュアンスぐらいは分かっただろう。ウソップだって一応年頃の男である。
 そのことについて敢えて自分から何かを言うつもりはなかったし、あまり触れたい話題でもない。ゾロもさっさとその場を立ち去ろうとすれば意外なことにウソップがゾロを引きとめて来た。
「あのよーゾロ。俺が口を挟むことじゃないのかもしれないけど・・・お前、サンジと・・・その・・・・・・」
 どうやらウソップの方から首を突っ込む気らしいことが分かって、ゾロは溜息を吐いた。
「てめぇ、俺とルフィの会話聞いてたんじゃねーのか?」
「ああ、大方分かったよ。だけど・・・」
 言い淀むウソップに痺れを切らしたようゾロが言った。
「俺が無理やり抱いてた」
 ここまで来たら今更隠すことでもないだろう。勿論あのコックがこの場にいたら、真っ赤な顔をして怒りそうな気はするが、今そのコックはここにはいないのだ。
 ウソップはゾロの返答を聞いておどおどとゾロを見上げた。何か言いたいことがある顔だと分かったから、ゾロは敢えてその言葉を待つ。何より、都合の悪いことや気まずいシーンに遭遇すると直ぐに逃げたり隠れたりするウソップらしくなく、震えながらも正面から向き合う姿勢を取ると言うことは、こいつなりに何か思うことがあるのだろう。
 これでいてウソップは、仲間内では一番メンバーのことにあれこれ気を使っている男だ。
 逡巡の間を置いて、しかし意を決したようにウソップは口を開いた。
「ルフィの言うようにそれはおかしいだろう。サンジなら、本気で嫌なら抵抗するはずだろう・・・あいつなら例えお前からでも逃げれたはずだろう?」
 言われて見れば確かにそうだと言う気もする。ルフィも同じようなことを口にしたが、ただそれがお互いに処理だけが目的だった場合の可能性などこいつ等の頭には最初から思い浮かばないのだろう。
 それこそ、ルフィの言うよう・・・仲間だから・・・なのだろうか? むしろゾロには仲間だったからこそ、処理を目的にした体だけの付き合いと言うものも存在するのではないかと思う。
「俺、実は昨日サンジと話したんだ。夕飯終わった後だったけど、珍しくあいつ俺の工場まで足を運んできて、またキッチンのどこかが壊れて修理の依頼にでも来たのかな?って思ってたら、たまには一緒に茶でもどうだ・・・って・・・・・・」
 急に話を変えたウソップが何を言いたいのか分からない。だが、ゾロは大人しくウソップの話に耳を傾ける。
 チラチラとゾロの表情を窺いながらもウソップは話を続けた。
「それで・・・いつも通り他愛のない話をして盛り上がって・・・それで、そろそろ寝るからってあいつ部屋を出て行く時、急におかしなこと言い出したんだ」
「おかしなこと?」
「ああ。もし、ルフィとゾロが喧嘩するようなことがあったらお前が止めてくれよな!って」
 ゾロが目を瞠る。
「俺、嫌だって言ったんだよ。それはいつもお前の役目だろう? って。そしたらあいつ急に笑って、あいつら馬鹿だろう・・・って、言うんだ。俺、サンジが何を言いたいのか分からなくて・・・・・・」
 話しながらもウソップは昨晩のサンジの顔を思い出していた。いつものように煙草を口の端に加えながら笑って、その顔が妙に儚げに見えたことを思い出す。
「結局、サンジの奴、肝心なことには答えないで、最後に俺、お前と馬鹿やってんの結構好きだぜ!とか言うから、それこそ何言ってるんだ、こいつ・・・って思って、冗談めかして、それだと俺もお前も馬鹿だってことだろう? って返してやったら・・・あいつ・・・また笑ってた」
 今思えば、あれはサンジなりの「別れ」の挨拶だったのだろうと、ウソップは思う。恐らく、メンバーの誰もが俺のようにサンジと昨日会話を交わしていたのではないだろうか? それは日常にありふれた他愛のない話だったかもしれない。
 単なる愚痴や、世間話、夢や、喧嘩、思い出の話だったのかもしれない。
「あいつ・・・馬鹿だって思うよ、俺。でも、サンジと馬鹿やってる時間が俺は好きだった。それは、ルフィやお前が感じていた時間と何も変わりはないはずだろう。俺はあいつだって、そうだったって思ってるんだ・・・・・・」
 最後あたりはほとんど鼻声になっていて、うまく聞き取れなかった。鼻をすする音が聞こえて、ウソップは決め台詞のように「それだけだ・・・」と言って、チョッパーの後を追うように室内を出て行ってしまった。



 頭は混乱している。
 本当なら自分も街に下りて、さっさとあの馬鹿を見つけて連れ戻して殴りつけたい気分は山々だったが、留守番を任された以上勝手をするわけにも行かず、サニー号の船首に乗っかってぼんやりと空を眺めているルフィは放っておき、ゾロは取り合えず船内に何かコックの行き先の手がかりになるようなものがないか探すことにした。
 いつもならこう言う時は昼寝を決め込み時間を潰すゾロだったが、どうしてか今回はそんな気にもなれない。事の成り行きを見守ってから、元々動く体質でもあったが、その成り行きを待っていられる余裕すらない自分に知らず溜息が出た。
 どうしてかあのコックが関わってくると冷静ではいられない自分がいる。その理由などとっくに分かりきってはいたのだが、見事にあいつが俺の一世一代の告白を忘れてしまってからは、あまり考えないようにしていたことだ。
 大剣豪を目指す奴がこれしきのことに振り回されてどうするんだと、自らを叱咤したくもなるが、そうしたところで気分が落ち着くわけでもない。
 取り合えず、いつもあいつが陣どっていたキッチンに足を運んでみる。
 特にいつもと変わりはなかったが、朝食の後片付けが出来ておらず、食器がシンクに山積みになっていた。コックが見たら怒るだろうなーと思いつつも、ふと視界にノートの束が目に入った。
 あのコックが毎日のようにつけていた料理メモのノートだが、いつもは人目の付かない棚の奥に隠されてあるものが今日は堂々と台の上に置かれたままになっている。大方、ナミあたりが引っ張り出したのだろうと、特に何かの手がかりがそこにあるとも思えなかったがパラパラとゾロはノートのページを捲ってみた。
 相変わらずと言うか、そこには丁寧に料理関係のことが纏められている。また新たに追加されている項目もあり、律儀に記された日付けを見れば昨日のギリギリまでこのノートに調理の仕方などを記していたことが窺いとれた。
 ふと気になって、まだ何も記されていない真っ白のページを捲っていけば、あいつが記憶を失う以前に書いたものだと思われる、俺宛てのように見えた文字が黒い線で消されていた。
 まさか・・・と思い、ノートの最後のページを見てみれば、そこに記されてあった言葉も黒く塗りつぶされて、元々何が書いてあったのかも分からなくなってしまっている。あのコックがやったのだろうか?
 なら、どうしてわざわざ書いた言葉を消す必要があったのだろうか?
 そこにあったはずの記述は、「クソマリモ・・・・・・悪かったな・・・・・・」と言った俺に向けた謝罪と、「・・・これは俺が勝手にやったことだから」と言う、恐らくこれも謝罪に続くはずの言葉だったのだろう。
 この時、声が出なかったコックはこうして書くことで、自らの心の内を喋れない分、吐き出していたのかもしれない。
 しかし、あのコックはそもそも、このノートをゴミ箱に捨てていたのだ。それが何故なのか? と考えた時、やはりこのノートに思わず書いてしまった言葉を仲間の誰にも見られたくなかったのだろうな・・・とゾロは思った。
 そして、いつ自分がいなくなっても構わないように作られたノート自体も、何かを悟らせるようで嫌だったのかもしれない。
 ・・・となると、今になってあの時書いた文字を黒く塗りつぶして消した理由は何だ?
 違和感が頭を過ぎる。もう少しで確信に触れそうな気がするが、肝心のところでそこまで到達しない。
 はっきりとしない気持ち悪さを抱えて、今度は男部屋に向かった。コックのロッカーを開けてみると、当たり前と言ったらそうなのかもしれないが、何も私物は残っていなかった。
 あいつがこの船にいた痕跡はあのキッチンに残っていたノートだけなのかと・・・苦々しい思いを抱えながら舌打ちすれば、ふと男部屋に脱ぎ散らかしている洗濯物の中に見に覚えのあるシャツが目に入った。
 薄い青のシャツだ。もしかして昨晩あのコックが着ていたものではないだろうか? と、ゾロは記憶を掘り起こしてみたが、確かに間違いないと思う。
 手に掴んでみるとズシリと重くそれは濡れていた。あれから洗って、そのままここに投げ捨てて行ったのだろう。
 洗った痕跡はあるものの、水で流しただけなのかところどころに落ちきらない染みのようなものがある。赤い色も中には薄く交じっていて、昨晩の行為の痕跡をこれで拭ったのかもしれないなとゾロは思った。
 途中で滑りが良くなったように感じたのは、恐らく内部が切れたからだろう。酷く辛そうな顔をしていた。徐々に蒼褪めていった顔もこの目にしていた。
 眦に浮かんだ涙がその頬を滑り落ちる様も、漏れる声が苦痛を刻んでいたことも全て・・・あいつが、後悔はしていないと言ったところで、自分の胸には酷いわだかまりとして残っている。
「くそっ・・・・・・」
 こんなものしか残っていないのかと、床に濡れたシャツを投げ捨てれば何かがカツンと床に当たる音がした。投げ捨てたシャツのポケットから何かが覗いている。ポケットの中に残ったままだったそれを取り出してみると、それはあいつが愛用していたシガレットケースだった。気付かずにシャツと一緒に水で洗ってしまったのだろう。
 中を開けばところどころ水が入り込んで濡れた煙草が数本出てきた。愛煙家のあいつにしては、らしくないものを忘れていったものだと思う。どうせ水で濡れてしまって吸えはしないのだが、何となくこのままにしておくのも躊躇われて、中に張り付くようにして残っている煙草を全て取り出せば、ケースの内側に何か白いものが張り付いていることにゾロは気付いた。
 破いてしまわないように丁寧に取り出してみると、それはただの一枚の紙のようだったが、折りたたまれた状態のものを剥がすように開いてみればそこに何か文字が書いてある。
 ところどころ滲んでしまっているが読めないほどではない。 
”俺が俺を判別出来なくなったら直ぐに船を下りろ。予告する者に耳を貸すな”
 何かの暗号だろうか? 首を傾げたゾロだが、ふと聞き覚えのある単語がこの白い紙に書かれた文字の中にあることに気付いた。
 予告する者?
 何かが引っかかる。
(ミルザムって言うのはシリウス同様に星の名前よ? 元々はムルジムって発音するんだけど、地方によってはミルザムとも言うの。シリウスが昇ってくるのを予告する星って言われているのよ・・・・・・)
 ふと、ロビンが朝に言っていたことを思い出した。難しい話だったので俺にはさっぱり分からなかったが、コックの口から唯一聞き出したその名が「ミルザム」であったために、ロビンがそのことについてあれこれ言うのだけは記憶の端にしっかりと留めておいたのだ。
 確かロビンはミルザムのことをシリウスが昇ってくるのを予告する星だと言っていた。すると、この白い紙に書かれてある”予告する者”とはミルザムと言う男のことを指しているのではないだろうか?
 よくよく見てみれば、滲んでいてもその筆跡はコックが毎日マメにつけていたノートの文字と一緒だ。つまりこれはコック自身が書いたものだと言う線が濃くなってくる。・・・となれば、あいつは自分でこれを書いて、シガレットケースの中に入れ後生大事に持っていたのだろうか?
 いや、それだと何かおかしくないだろうか? 自分で書いて自分で持っているべきもののようには思えない。お守りの類にも見えないし、むしろこれは自分に宛てた警告ではないだろうか?
 そこでゾロはハッとした。もしかしてこれは記憶を失う以前のコックが何かに気付いて自分で自分に警告をしていたのではないだろうか?
 そして記憶を失くした後にあいつは自分の警告を見つけた。
 もしかして、コックは自身が喪失していくことを気付いていたのではないだろうか?
 それに、”俺が俺を判別出来なくなったら”と言うのは、どう考えても記憶の喪失を指しているとしか思えない。となると、その後に続く”船を下りろ”と言う自身からの警告にあいつは従って今回こんな真似をしたのだろうか?
 つまり、この船にあいつがこのまま乗っていれば、何らかの事態が起きた。それを危惧してあのコックは船を下りた。
 そう考えられないだろうか? しかし、それは一体何のことを示しているのだろうか?
 考えれば考えるだけ分からなくなってくる。ロビンなどに見せたら一発で何かに気付いてくれるかもしれないが、生憎今は街へ下りてしまっている。これは後で皆に見せて相談してみたほうがいいかもしれない。
 そう考えたところで、またふと違和感を感じた。
 記憶がない状態のあいつがこれを見つけて目にしたところで何のことを言っているのかは、恐らくあいつ自身も最初分からなかったはずだ。だが、あいつは今回自分の警告に従って船を下りた。
 すなわち、この警告を確信づける何かに気付いてしまったことにならないだろうか? なら、何故あいつはそれに気付いた? 少なくともこの狭い船内だ。俺もチョッパーも頻繁にあいつの行動には気をつけて見張っていたし・・・・・・。
(何だ?眠いのか、クソマリモ?・・・いいぜ、ゆっくり寝ろや・・・)
 意識の落ちる直前に聞いたあいつの声が頭の中で何度も繰り返された。違和感が強くなる。
 クソマリモ?
 そうだ、これだ!!!!
 違和感の正体に急激に気付いた瞬間、俺は直ぐにそのことに気付けなかった自身を酷く嫌悪した。同時にあのコックに対する怒りまで湧き上がってくる。
 あいつは記憶を失ってからは俺のことを「マリモ」とは呼ばなかった。ずっと「ゾロ」とちゃんとした名前で呼んでいたのだ。
「あの馬鹿・・・・・・」
 あいつは恐らく昨晩の時点で何もかもを思い出していたのだ。失った記憶そのものを。
 チョッパーが言っていたではないか。昨日、戦闘の仕方を思い出したのが引き金になったのではないか? と。俺はただそれだけで、あいつが全てを思い出したのだとまでは思わなかったし、あいつもそうだとは口にしなかった。
 しかも、性質が悪いことに記憶を失ったままの自分をあいつは演じていたために、誰もが疑いすら持たなかったのだ。
 ただ徐々にあいつが自分を取り戻しつつあるのだけは分かっていたのに、それが急激に戻るものだとは予想もしていなかった。
 コックが全てを思い出していたと仮定すれば、昨晩のあいつの行動全てが、あいつなりの精算だったのではないだろうか? 思い出したからあいつはウソップのところにも顔を出した。ちゃんとルフィに船を下りることも告げていった。恐らく他の仲間達のところにもそれなりに顔を出したのだろう。
 そして俺のところにも、あんな調子で現れた。以前のあいつと同じよう、ただ体だけを求めた。
 ノートに自分で記した文字を消した理由だって、記憶が戻ったからだと考えれば納得が行くような気がした。あいつはあれを見られたくなくて、記憶を失う以前にノートを自分でゴミ箱に捨てたのなら尚更だと思う。
 ・・・となると、あいつの記憶は完全に戻った。
 チョッパーやロビンの言うように、あいつが何かを喪失することで自分を何かから守っていたのだとするのなら、回復する度に侵食が強くなりもっと大きな何かを引き換えにしなければならなくなる。
 最初は声だった。声の次は記憶。じゃあ、記憶が戻ってしまった今、あいつは次に何を失うと言うのだろうか?
 記憶以上に大事で大きなものはそう多くはない。何を思いついても、不穏な展開しか生まない。
 やはりジッとはしていられそうにはなかった。前の島で何故俺はコックをあんな目に合わせた奴等を放っておいたのだろうか? 止めを刺しに戻らなかったのだろうか?そのことだけがただただ今となっては悔やまれる。
 ただあの時、あまりにもあのコックが酷い状態だったから、事を大きくしてはマズいと思ったのも確かだ。だが、あのコック自身が言ったではないか。あいつ等が俺達を追ってきたらどうするのだと・・・。今となってはもう遠い日のことのように思えるそれは、一体いつから始まっていたことなのだろうか?
 不意に慌しい足音がした。駆けるような音に慌てて外に飛び出すと、トナカイに姿を変えたチョッパーがどこか血相を変えて船に飛び乗ってきたところだった。
「あ、ゾロ!!!大変なんだ。俺、見つけたんだ。前の島でサンジが会った知人だって男!!!!」
「ミルザムか?」
「たぶん、間違いないと思う。俺は一度顔を見てるから!今ウソップが後をつけてる」
 騒ぎを聞きつけて今まで船首で空を見上げていたルフィも下りてきた。チョッパーの報告を聞くなり飛び出そうとするルフィをゾロが遮る。
「俺が行く。お前は船にいろ!他の奴等が戻ってくるかもしれない。行くぞ、チョッパー!!!」
 言って、ゾロは身軽な動作で再び船から飛び降りたチョッパーの後に続いた。


 


 あとがき--------

 ウソップ・・・頑張ったつД`)・゚・。・゚゚・*:.。
 
web拍手 by FC2

Comment

非公開コメント

ページトップへ
クレジットカード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。