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依存性シーカー25

2013.04.24 21:29|Novels
 チョッパーからの忠告は俺がコックのイネーブラーになる可能性を示唆している。
 どうしようか迷ったが、結局ゾロはその日の晩もサンジのいるキッチンに顔を出した。
 ゾロが来ることを見越していたらしく、キッチンを挟んだカウンターの上には酒とツマミが乗っている。
 ゾロがカウンターに腰かけたタイミングで、キュッと蛇口を捻って水を止め、手をタオルで拭ってサンジもゾロの隣に腰を下ろした。
 以前は夜になる度にコックの方がトレーニングジム兼展望台の方に、酒とツマミを持って来てくれていた。
 俺達はそこで酒を飲んだりもしたが、結局最終的には性行為になだれ込む顛末になっていた。
 今は俺の方がッコックのいるキッチンに通うようになった。
 キッチンに顔を出して、コックの作ったツマミを摘みながら酒を飲む。展望台にコックが顔を出していた頃のそれと何も変わりはしない。
 ただ、その後に性行為があるかないかだけの話なのだ。
 チョッパーの忠告を受けた直後だからこそ、ゾロはもうここに顔を出すべきではなかったのかもしれない。
 俺が酒を飲みさえしなければ・・・もとい、酒を飲んでもコックに分からないようにこっそりと別の場所で飲みさえすれば、コックは酒を恐らく飲まない。
 なので、わざわざキッチンに顔を出す必要はない。
 それなのに、ゾロはキッチンに顔を出してしまっているし、目の前に用意された自分のためのツマミと酒を目にすれば、晩酌をしたいと言う気持ちも当然のように沸き起こる。
「飲まねえの?」
 いつまで経ってもゾロが酒に手を伸ばさないのを見兼ねたらしい、サンジの声がかかった。
「え、ああ」
 それに急かされるようにしてグラスに酒を注ぐ。
 今まで瓶の酒は直接ラッパ飲みにすることが多かったが、こいつが俺の飲む酒の半分量を口にするようになってからは、瓶1本空ける時は、その半分をサンジが飲むと言うのが、既に当たり前のことになっていた。
 なので、ゾロはサンジの目の前にあるグラスにも酒を満たしてやる。
 サンジの方はアルコール依存ではないのだとチョッパーは言った。
 なら、飲ませても大丈夫だと言うことだ。
 毎朝顔色が悪いのは少し飲みすぎかもしれないけど、ずっと続くことじゃないと思うよ・・・とも、チョッパーは言っていた。
 むしろ、アルコール依存なのは俺の方で。
 コックはそうじゃない。
 そうじゃないと知っているのに、やはりゾロはサンジに酒をこれ以上飲んで欲しくなかった。
 子供の駄々のような意地で、その念は何故だかやたらと大きい。
 乾杯と、グラスを合わせれば、その音頭に急かされたようゾロもグラスに満たされた酒に口をつけるしかなかった。
 コックは俺が酒に口をつけても、特に嫌そうな顔もしなければ、文句の1つも言って来ない。
 島に立ち寄った日、コックが酷く酒に酔っていたその時に言われたことの数々を思い出し、噛み締める。
 コックは表面には出さないが、少しでも俺に優しく出来ればいいと本気で必死なのかもしれなかった。
 そのせいか、日中はほとんど接触がない。
 以前が見張られるようにやたらコックが傍をうろちょろしていただけに、余計にそう感じるのかもしれない。
 今は飯やオヤツの時間に俺を呼びに来る、ほんの数秒足らずの接触しかないのだ。
 だからこそ、夜にコックと2人で酒を密やかに飲み交わす時は、ゾロにとってサンジと唯一ちゃんとした接触を持てる時間でもある。
 ゾロは案外その時間が好きだ。
 顔を合わせれば喧嘩ばかりしていたコックと静かに酒を飲むことの出来る穏やかな空間を壊したくないとさえ思う。
 ゾロはサンジに酒を飲んで欲しくはなかったが、この空間は好きだからこそ、もし本当にこいつが酒を飲まなくなったらと思うと、それはそれで何だか面白くない。
 見事に自分の考えが矛盾していることに、大分前からゾロは気付いていたが、自分ではどっちを有利とする答えも出せずじまいだった。
 朝に酒のせいで顔色の悪いコックを見ると、もうお前は酒を飲むな! と怒りたくなる。
 その怒りは日中ずっと引きずったままなのに、夜になると、こうしてコックの作ったツマミを飲みながら一緒に酒を飲みたい。
 一体どうすればいいと言うのだろうか?
 しかも、コックはナミの言うことも断ったらしかった。
 あのコックが女の頼みごとを断るぐらいに職務に忠実だと言うのなら、酒の代わりにまた前みたくコックに手を出してみる方法もあったが、やはりゾロはそれも、今はしたくないと思った。




 結局、同じような感情を更に数日繰り返し続けたが、夜になるとやはり酒が飲みたいので状況は何一つ変わらないままだ。
 夜にコックと酒を分かち合うのが日常になってしまって一週間程経っていた。
 島での一件以来、毎晩欠かさずゾロはサンジと酒を飲んだし、サンジもそれに付き合っていた。
 恐らくこの流れはこのまま変わらずにずっと続いていくものなのだろうと思っていた矢先、コックが急に今日は酒を飲まないと口にした。
「俺は飲むぞ?」
 確認のように問えば、カウンターを挟んだ調理場スペースに立ち、ゾロのツマミを作っていたサンジはあっさりと頷く。
「お好きにどうぞ」
 特に険も皮肉も返答には篭っていなかったので、一体どう言う気の吹き回しだと思いながらも、ゾロはいつも通りグラスに酒を満たした。
 コックが飲まないのならわざわざグラスに注がず瓶で一気に煽れば良かったのだろうが、そうすることが既に習慣になってしまっていたのだ。
 注いだ後で、本当は瓶に口を直接当ててラッパ飲みする方が気分がいいのだと思いだしたが、グラスに一度注いだ酒をまたわざわざ瓶に戻すような面倒な真似をするような気にもならない。
 ゾロが手に取ったグラスの傍にはいつものように、コックのグラスも置いてある。
 カウンターにはいつだって食器棚に仕舞われないグラスが2つ揃って並んでいたが、朝や昼間には見かけないので、夜になるとコックがわざわざ準備しているのだろう。
 今晩もグラスは2つ並んでいるのに、酒を今日は飲まないなどと言うコックに不信感を感じながらも、ツマミを作る背中をジッと見る。
 酒を飲めないぐらいに今日は具合が悪いのだろうか?
 だが、朝は少々酒が残っていたのか辛そうに見えた顔も、昼前にはすっかり元通りの血色に戻り、船の欄干に腰かけて釣りに励むウソップ達に釣る魚のリクエストをしていたようにも思う。
 コックが甲板上に出て来ていると言うことはそれなりに調子が良く、気分もいいと言うことだ。
 数日前にゾロがうっかり飲み過ぎたか・・・と感じた日の朝には、二日酔いの頭痛と吐き気に襲われていたのだろう。
 いつもの軽快な舌端を潜め、憂鬱そうな顔のコックが無言で給仕を行っていた。
 その日、ゾロは結局甲板上でサンジの姿を見ることはなかった。
 気になって酒を取りにいくついでに様子を見に行ってみれば、ダイニングのソファに転がって蒼い顔をしているコックを見つけた。
 ドアの開く音や、俺の足音が響くだけでも辛いらしく、早くどっか行け! と全く覇気のない声音で返した。
 だが、今日はそんなことも無かったはずだ。
 何せ、流石に悪く思い、ゾロは意識して昨晩飲む酒の量を控えてやったのだ。
 具合が悪いわけではなかったら、何故今晩、コックは酒を飲まないと言うのだろうか?
 俺にも飲むな! と言うならまだしも、そう言う強制をしてくるつもりもなさそうで、ツマミを作っている後姿もその証拠になる。
 ナミに何か言われたのだろうか? とも考えたが、この間、ナミからの、酒を止めて欲しいと言う頼みごとを断ったとあれば、その線は薄い。
 だとするならチョッパーの方だろうか? とも考えたが、チョッパーは特にコックが酒を飲むことに関して危惧など見せていなかった。
 ゾロは自分が酒を飲みたくない時はどんな時だろうか? と考えたが、そもそも飲みたくない日など今までに全くなかったので、さっぱり分からない。
 飯を食いすぎて腹一杯で酒が飲めないだとか、女なら酒の飲み過ぎで少し体重が増えただとか言う、くだらない言い訳も考えに上ることは上ったが、どれもコックには当てはまらないことだった。
 不可解だと、悶々考えながら酒をチビチビやっていたら、ツマミが出来上がったらしく、ゾロの前に皿が差し出された。
 フライパンでジュージューやっていたように思ったが、出て来たものはピザだ。
「ジャガイモなんだぜ、それ!」
 怪訝そうな顔をしたつもりはなかったが、あまりにも皿の上の料理を見つめすぎていたのがいけなかったのか、すかさず説明が入った。
 見た目が完全にピザなのでジャガイモのようには見えなかったが、口に運んでみれば確かに芋の味がした。
 ピザなどと言った洒落た料理を、ゾロが育った村では作る奴もいなかった。なので、ゾロがそれを口にしたのは、海賊狩りとなって村を出た後のことだったし、今でもそう好んで口にするわけでもないが、芋で作ったピザらしきものはゾロの好みに合って、美味かった。
 青しそが散りばめてあるところが特に気に入り、酒もそれなりに進む。
 ツマミを頬張り、酒を飲み、それを繰り返していたら、洗い物を片付け終えたコックがカウンターの隣に腰を下ろして来た。
 ついさっき、今日は酒を飲まないと口にしていたはずだが、もしかしたら欲しくなったのかもしれない。
「いるか?」
 瓶に残っている酒を見せてやれば、コックは首を振る。
「いいって言ったろ。まあ、ちと腹が減ったからツマミは貰うが」
 そう言って、ゾロの食べかけていたピザらしき芋料理に手を伸ばしてくる。ピザのように切り込みが入れてあったそれの1ピースを手に取り、サンジは口の中に放り込んだ。
 人の食べているものに横から手を出すなどと、コックにしては珍しい行動のような気がする。
「うん、いい味になった」
 味見をしていなかったと言うことだろうか? 満足げに頷いた後で、席を立ちあがる。
 もう寝るのかと思えば、蛇口を捻り、いつもは酒を満たしているグラスに水を注いだようだった。
「味が濃いから喉が渇く」
 そう言ってまたカウンターに腰を下ろし、ゾロの隣で水を飲む。
 水などより、酒にした方が、このツマミだとよっぽど美味いだろうと思ったが、サンジは酒を欲しがる素振りを見せない。
 もしかしたら、もう酒を飲むのは止めたのかもしれない。
 だとすると、ゾロの心配ごとは1つ無くなったと言うことになり、これでゾロがサンジのことを気に留める必要も無くなったわけだが、元々が矛盾していた感情なだけにすっきりとしない。
 だが、サンジは酒を飲まないのに、ゾロの酒にこうしてグラス1杯の水で付き合ってくれている。
 そうする真意は何だ? と、探るようにその横顔を見る。
 ツマミには一口、口にしただけで満足したらしく、それ以上手を伸ばしてこようとはしない。
 水などチビチビ飲んだところで味気ないだけだろう。せめて、女共によく出している心地よい睡魔を誘うためだとか何とか言うホットミルクや、ハーブティーを飲んでいるのならまだしもだ。
「何で今日は酒を飲まねえ?」
 いつもは真っ赤な顔をして隣に座っているサンジの顔色は通常時のものと同じだ。
 ・・・とは言っても、男にしては色が白いので、キッチンの光量を絞られたライトの下では相変わらず白っぽく見える。
「んー、まあ、明日は忙しいからな」
 言われて何か明日にあっただろうか? とゾロは考えたが、全く思いつかない。
 ナミが島に着くなんてことは言っていなかったし、敵襲や嵐が襲うなんてことは予想もつかないことだ。
 何があるのかとゾロは聞いてみようと思ったが、隣に座って水を飲んでいるサンジは既にもう、ウトウトとし始めていた。
 眠たいのなら、こんなところで俺に付き合うよう水なんて飲んでいないで、さっさと部屋に戻ればいいのに、いつまでもダラダラしているからこれだ。
 酒も今日は飲んでいないので、余計にいつまでもこんなところにいる理由はないだろう。
「おい、寝るなら部屋に行け!」
 そう声をかけると、危なげにぐらつかせていた顔をハッとしたように上げて、サンジは目を擦った。
「ああ、そうする。明日も早ぇしな。おやすみ」
 素直にゾロの言うことを聞いて、サンジはキッチンを出て行った。
 結局、ゾロの飲酒を注意する言葉は一言もその口から落ちなかった。




 今まで酒は1人で飲むことが多かった。
 だが、最近はコックが常に俺の飲酒量を見張るよう隣にいたせいか、いざコックがキッチンから出て行き、その場に1人取り残されると、不思議なことにあまり酒が進まない。
 あいつが残して行ったツマミを口に頬張ると酒を飲みたいと言う気持ちは募るが、その行動を何度か繰り返しているうちにコックのツマミは直ぐに無くなり、カウンターの上には半分量だけ残った酒瓶だけになってしまった。
 いつもならコックの胃に納まるはずの分だが、今日は酒を飲まないと言ってコックはもう休んだのだ。
 なら、これを俺が飲んだところで見咎める奴は誰もいないわけである。
 一度栓を開けてしまったら酒は風味が落ちるのが早いので、その場で飲み干してしまった方がいい。
 そう自分に言い訳づけてグラスに残りの酒を注いでみたものの、ツマミがないせいかちっとも酒は進まなかった。
 可笑しなものだと思う。
 隣にある存在がいなくなっただけで、これなのだ。
 コックがここにいれば、また新しくツマミを作ってくれただろうし、ツマミを作ってくれなくとも、ちょっとした酒を進める話し相手にぐらいはなっただろう。
 どっちかと言うと、これは酒に依存しているのではなく、酒を飲むことで得られる空間に依存していると言った方が正しいような気がする。
 その空間も1人で静かに酒を飲める場所ではなく、隣でグラスを一緒に傾けてくれる奴のいる空間だ。
 そして、恐らくそれは誰でもいいわけではないのだろう。
 何かに気付いてしまった気がする。
 酒が齎す一時の気の迷いだろうか?
 そう片付けておくことにしても、ゾロの胸は不快感が泥のように滞留しているのか、重い。
 何だかモヤモヤするのだ。
 コックは、もしかしてもう俺と酒を飲むのを今日で止めたのではないだろうか?
 丁度1か月ぐらい前。ロビンのバースデーパーティーが行われた日を切っ掛けにして、唐突にコックとの性交渉を止めた俺と同じよう。
 もしかしたら、あいつも今あるこの関係、この空間を急に終わりにするつもりなのかもしれない。

 
 


 ずっと、そのことを考えていたら寝つきのいい自分にしては珍しく、酒をどれだけ煽ってみても睡魔は訪れず、結局ゾロが寝付いたのは明け方に近い時間だった。
 ここぞとばかりに酒を片っ端から飲んでやろうと思いもしたのだが、飲んでも飲んでも味気なさが増すだけで、味も何だか水を飲んでいるようであった。
 味覚障害でも一瞬起こしたのではないかと思ったほどだ。
 そのままキッチンで眠りこけていたゾロを起こしたのは、当然のように誰よりも朝が早いコックで、ここで寝ていると皆が起きて来た時に邪魔になるから、他のところで寝ろ! と追い出された。
 その時は寝起きの悪さも重なってカチンと来たのだが、何せ睡眠時間が足りていないせいで恐ろしく眠い。
 コックもそれ以上言葉をかけてくる様子も見えなかったので、喧嘩と言う喧嘩にまでは発展せず、ゾロはのろのろと移動し、太陽が上がり始めた甲板でもう一眠りすることにした。
 早朝の生まれたばかりの風が潮の匂いを運んでくる。
 波の音は穏やかで、天気が荒れそうな気配もなく、それから少しするとドタドタと仲間達の起き出して来た気配がした。
 何もない日のはずだ。
 なのに何で昨日、コックは今日が忙しいと言って、俺と一緒に酒を飲まなかったのだろうか?
 昨晩からずっと同じことを考えている。
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