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微熱or・・・26

2013.01.23 12:13|Novels
 ゾロの誕生日が終わり、もうすぐ12月に差し掛かる頃、ゾロとサンジは互いの気持ちを認め合う機会に恵まれ、恋人としてお付き合いを始めることになってしまった。
 付き合おうと言う言葉が互いの口から出たわけではなかった。
 前の島に上陸した時の一連の流れで、結果として「好きだ」と言う意思感情が見事に2人の間で一致しただけのことだ。
 そこで、一致したから、取りあえずどうする? と言う話になり、「好き」の形を纏めれば世間一般では恋人同士ってことになるんじゃねえか? なんてことをサンジが言ってしまったがために、取りあえず、じゃあ、そう言う方向で・・・と何だか適当に纏まってしまったのだ。
「どう言う方向だよ・・・」
 数日前、お付き合いを始めることになった日のことを思い出し、サンジは思わずぼやいてしまった。

 付き合い始めてまだ一週間も経っていない。
 極一般的な恋人同士なら、まだ初々しい緊張感や、新しく発生する感情をドキドキそわそわしながら楽しんでいる頃だろう。
 だが、サンジの顔色は暗い。
(なんつーか、今更感があるんだよな・・・)
 自分用に淹れたコーヒーに口をつける。
 いつもなら紅茶を飲むのだが、ほんの少し寝不足ぎみなのだ。
 朝のうちは動くことが多いせいかあまり感じなかった睡魔を、昼が過ぎた時点で強く感じ始めたので、少し濃い目にコーヒーを淹れた。
 3時のティータイムまで、まだ少しだけ時間がある。
 オーブンに入れたシフォンケーキが焼き上がるまで40分程。
 ケーキに添えるきな粉クリームも作った。
 別に誰かを贔屓したわけではないが、ついつい抹茶のシフォンケーキにしてしまった。
 きな粉クリームのほんのりとしたベージュ色が、抹茶の緑によく似合うのだ。
 飲み物には紅茶とコーヒーと、そして冷抹茶。
 季節的には温かい飲み物がおいしい頃なのだが、どうせあの馬鹿はいつものように鍛錬に熱中している頃だろうし、喉が渇いているだろうからと、冷たい抹茶まで用意してしまった。
 抹茶は氷で冷やすと、後味がすっきりした苦みになって飲みやすいし、菓子にも合う。
(流石に露骨すぎるか?)
 リビングソファの背凭れに思い切り背を預け、飲んでいたコーヒーの意味もなくサンジは目を閉じた。
 

 ぶっちゃけて言って、始まり方が何だか微妙と言うか、思い切り犯罪だったせいか、いざ正式にゾロと付き合うことになってみれば、何をしたらいいのかさっぱり分からない。
 普通は付き合い始めてから徐々に心の距離を縮めて、手を繋いだり、キスをしたりと、進展していくことが、俺達の場合、それを思い切りすっ飛ばして最初から過激な肉体交渉だったせいで、付き合い始めた時には既に恋人達の最終局面が達成されていたわけだ。
 じゃあ、やればいいじゃないか・・・と言われるかもしれないが、やるやる言ったって、そう簡単な話じゃない。
 俺の首に首輪がついていた時は、毎日のようにゾロに抱かれていても、あまり仲間達の目を気にすることはなかったように思うが、我に返って見ればここは狭い船の中。
 幾ら人目の無い夜を選んで行っていたとは言え、いつ誰に目撃されるかも分からない中で行う行為と言うものはどうも心臓に悪く乗り切れない。
 そもそも、同じ船の仲間・・・しかも男とそう言う関係になると言うのはどうなんだろうか?
 もしそのことを仲間達に知られたらどんな目で見られるか・・・と考えてみれば、やはり居た堪れない。
 当然仲間達もいい気はしないだろうし、船に変な気遣いや居心地の悪さを持ち込んでしまいたくはない。
 そんなわけで、露骨な行動は、今のところ一切していない。
 それどころか、付き合う前と付き合い始めてからとで、また一段とゾロとは距離が出来てしまったような気がする。
 こっちがあまりにも意識しすぎているのが悪いのだろうが、以前までなら当たり前にやっていた喧嘩1つさえ、今では満足に出来ないのだ。


「おい、起きろ!」
 声が聞こえた。
「おい、コック!!! 起きろって言ってるだろうが!!!」
 直ぐに怒鳴り声に変わったので、サンジは重たい瞼をそろりと開ける。
 いつの間に室内に入って来たのか、目の前に仏頂面のゾロが立っていた。
「あ、何だよ? 腹でも減ったのか?」
 別にちょっと俺が昼寝したぐらいで、そんなに怒らなくてもいいだろう。
 なのに、ゾロは不機嫌そうに眉を潜めている。
 自分はいつも暇さえあれば寝てばかりいやがるくせにと、そのことにムッとする。
「また眠っちまって起きなくなったのかと思ったじゃねえか! 紛らわしいことすんな!!」
 しかし、ゾロの言い分を聞いて直ぐに溜飲は下がった。
 全く、もう俺は首輪をつけているわけではないのだから、そんな心配する必要もないのにバカな奴だ。
 だけど、乱暴な口調で突き付けられた言葉が、サンジには少し嬉しい。
「少し寝不足なだけだ」
「眠れねえのか?」
「ん・・・まあ、ちょっとな・・・・・・」
 眠れないと言うか、まあ主に・・・夜にゾロのところへ行くかどうか迷い続けて、結局足を運べぬまま朝を迎えてしまう日が続いているのだ。
 大抵ゾロは夜に展望台のジムに篭って見張り兼トレーニングをやっている。
 そんなゾロに毎晩夜食を運ぶのは、2人の関係が一気にいろいろとすっ飛ばして進展する以前からのサンジの日課でもあったのだが、恋人と言う関係になってからは、何だか気後れしてしまってその日課を出来ずにいる。
 なので、フランキーに頼んでみたり、チョッパーに頼んでみたりして、夜食だけは運んでもらっていた。
 流石にこれでは露骨すぎるかと思い、夜も耽った頃にサンジ単体でゾロのところに顔を出そうかと考えるのだが、その勇気がなかなか出ない。
 行くべきか、行かざるべきか。
 そんなことをずっと迷い続けていたら、結局キッチンで形だけレシピ帳を広げたまま、外の空が白み始めていたりする。
 別に初めてでもねえんだ・・・。
 緊張も躊躇いも恐怖も必要ないはずなのに、何故かサンジは動けずにいた。
 それに、ゾロがサンジに自分から誘いを持ちかけてくることは、あれから一度もない。
 ゾロがまだ普通に声をかけてくるのならサンジも何とかその誘いに乗っかっただろうが、ゾロがその調子だから、何となくこっちからも言いだせずじまいなのだ。
 まさか、抱いてくれ・・・なんて自分から言えるはずもないだろう。
 そりゃ、まあ・・・ゾロが自分で首輪を嵌めちまった時に、命令しろと言われて思いつく限りのとんでもない命令を言ってしまったのは自分だが、こっちはあれだけ羞恥心を飲みこんで勇気を振り絞ったと言うのに、肝心のゾロが手を出して来ないのでは、サンジにも再度自らアタックしようなんて気はない。
 だけど、恋人なんだろ、俺達?
 なのに、手を繋ぐとか言うのは、まあ本当に今更感があるからいいとしても、キス1つ無いのは何だか微妙な気がする。
(こいつ、まだ罪悪感とか感じてるんだろうか・・・それとも、あれは全部薬の効果で意外と奥手だったとか・・・)
 サンジはゾロの表情を窺うように上目遣いでその顔をチラリと見上げた。
 すると急に手が伸びてきてドキリとする。
 サンジはてっきりその手が自分の頬に触れ、漸くキスの1つでもする気になったのかと思ったが、ゾロのそれはサンジの前髪を掻き分けて額に触れてくる。
「熱とかはないみたいだが、どこか具合でも悪いのか?」
 何だ、そっちか・・・と一瞬がっかりした自分が滑稽で、何期待してんだ・・・と自己突っ込みする羽目になった。
「別に悪くねえよ・・・俺、今までずっと寝てたからつい夜更かしして料理とかしたい衝動がな・・・」
 まさかテメエのところに行こうかどうか夜な夜な迷ってたなんてこと言えるはずもない。
「何かあったらちゃんと言え。テメエは直ぐにそうして一人で無茶をする」
 ゾロの手が額から動いて、サンジの頭を優しく撫でた。
 誰だよ、こいつ。何でこんなに別人?
 いつに無く優しいゾロに唖然としてしまった。
 あまりにも無条件に優しいので、こいつなりに俺のこと、からかってでもいるんじゃないだろうか?
 そんな疑いすら思わず出て来てしまったが、覗き込んだゾロの顔は至って真剣で、どこにも冗談や揶揄の色はない。
 しかし、これはチャンスだ。
 ゾロの顔が近くにある。
 付き合い始めてから初のキスシーンにこのままさり気なく持って行けそうな雰囲気だ。
 ゾロに命令を強制された時にうっかり俺からしてしまったキスは当然カウント外だ。
 サンジは恥ずかしさを押し殺して、そっと目を閉じてみた。
 俺からこんなサービスすることなんて滅多にないんだ。
 さっさとキスでも何でもしやがれ!!
 ほとんどやけくそ気味に、なけなしの勇気を振り絞ってみたのだが、いつまで経ってもゾロの唇は下りて来ない。
 痺れを切らして目を開ければ、目の前にゾロの姿はなく、丁度ラウンジから出て行こうとしているところだった。
「え、あ、おい!!!」
「何だ?」
 慌てて呼び止めては見たものの、ゾロは普段と全く変わりなく、キスしようなんて雰囲気はどこにもなかった。
 白々しく去って行ったと言うよりも、こっちのなけなしの勇気に気付いていないのではないだろうか。
 こっちは心臓飛び出そうなぐらい緊張してるって言うのに、何でテメエはいつも通りで、何も変わらず平然としてるんだ!! と言いだしたい気持ちをグッと堪える。
「腹巻き・・・洗濯に出しとけよ・・・」
 その場しのぎに、サンジは適当に言葉を繋いだ。




 こんな状況が暫く続いてくると、何だかサンジは疲れてきた。
 そもそも自分ばかりが1人であたふたしているのは何だか理不尽だ。
 確かにあの時、俺達は恋人として互いを認識した上でのお付き合いと言うものを始めたはずだった。
 だが、実際ちゃんとした恋人生活の蓋を開けてみればこれだ。
 ゾロが俺に接する態度は何も変わらないし、キスもそれ以上の行為も一切無しである。
 まあ、若干俺に対して優しくなったような気はするのだが、考えてみればいつも自分が何かしらゾロに喧嘩を売っていたため、ゾロもそれにやり返していただけで、元からゾロは俺以外の仲間達には優しかったような気がしないでもない。
 つまり、俺はやっとゾロの中で、他の仲間達と同等のポジションに立ったわけだ。
 つーか、それって、普通の仲間と何も変わらなくねえか? なんてことを考え始めたらキリがない。
 何かこう・・・確かに仲間内でくっついちまうってのは職場恋愛みたいな感じで、何かとやりにくいかもしれないが、2人にしか分からない合図を作ってみるとか、2人っきりの時ぐらい、恋人らしい甘い会話でもしてみるとか・・・。
 いや、相手がゾロだと流石にそれは寒い。
 もう、こうなると結局恋人って何なんだろうなと言う気にすらなってくる。
 男同士で性行為以外にいちゃいちゃするのも気持ち悪いし、ただ欲求を果たすために抱き合うだけの存在なら別に恋人じゃなくてもいいんじゃないか?
 ・・・って、いや、まあ、別に今は全然抱き合ったりしていないのだが・・・。
 ・・・・・・そこまで考えてサンジは漠然と思った。
 じゃあ、今となっては体さえゾロから求められていない自分は一体ゾロの何なのだろうかと・・・。
 本当にあいつの恋人と言えるのだろうか?
 こんな風に弱気になってしまう自分など、らしくもない。
 サンジは船尾で今日も鉛櫛を振り回しているゾロをぼんやりと見据えた。
 こう互いが互いの行動を追っているような感じで目でも合って、面映ゆげに笑い合う・・・なんて光景でも少しはあればいいのだが、目1つ合いはしない。
 それどころか、何だかこう・・・最近になって少し避けられているような気がしないもでない。
 それとも俺が気にし過ぎなのだろうか?
 確かにあの極潰しは淡泊な奴だ。
 もしかしたら俺の恋愛とあいつの恋愛とでは若干ズレがあって、俺が思うような恋人関係など、あいつの頭の中では一切ないのかもしれない。
 サンジとて、別にいちゃいちゃしたいわけではないのだ。
 甘い言葉が欲しいわけでも、恋人みたいな光景を楽しみたいわけでもない。
 ただ、キスもねえってなると、少し不安になるだけで・・・別に抱かれたいわけでもない。
 いや、本心では抱かれたいのかもしれないが、あの時はゾロが他の奴に向かわないよう食い止めることに必死で、あまり行為自体には正直なところ集中していられなかった。
 まあ、犬に噛まれたようなものだったのである。

 その時、島が見えたと言う声が拡声器から聞こえてきた。
 ゾロの鍛錬の腕も止まる。
 冬は益々近づいてきている。
 なのに上半身を剥き出しにさせたゾロの逞しい腕は汗に濡れていた。
 あのまま放置してると一気に寒気が来て風邪でも引くんじゃないかとも思うが、ゾロが風邪を引くなんてことは想像もつかない。
 ただ体が冷えるのは誰にだってよくないだろうと思いタオルの1つでも持って行こうかと思ったが、これは仲間として・・・と言うか、俺とゾロの間に今まであった険悪感から考えると不自然な光景になりそうだ。
 出来れば仲間達には知られたくない。
 そう考えると結局、そうしてやりたいと思ったことは全て呑み込まれてしまい行動に移すこが出来ない。
 せめて、仲間達の目がなければなぁ・・・なんてことを考えながら、はしゃぐ船長の声を耳に、サンジもゾロから視線を見えて来た島に移す。

 

 


 前の島では食材の補充が満足に出来なかったので、これ幸いとサンジは真っ先に食料庫の在庫チェックに向かった。
 どうやら先に偵察に下りたウソップ達の話によると、新世界のリゾート地として有名な島らしい。
 沿岸には高級リゾート地らしく5ツ星の最高級ホテルが並び、海岸沿いの遊歩道から街歩きを楽しめば、陽光を弾く海の輝きが心を奪っていく。
「前の島ではいろいろあったし、折角なんだから少しぐらいリゾート気分を味わっていくのもいいわよね」
 ナミの鶴の一声であっさり滞在が決まってしまった。
 前の島でのことを言われてしまえば、ナミさんに悪気はないのだと分かってはいるが、それでもサンジは居心地が悪い。
 自分のせいで不必要な滞在期間を延ばすことになってしまい、状況も全く分からない中で俺が目覚めるのを待ち続けると言うのは、内側で結構な精神負担を与えたはずだ。
 この船の仲間達はやたらと仲間意識が強いため、余計に。
 不要な心配をかけさせてしまったことを申し訳なく思う。
「サンジ君も食料の補充なんかは後回しでいいから、たまには少しぐらい何も考えずに羽根を伸ばして来なさい」
 食料庫に篭り切っていたら、ナミさんにそう声をかけられてしまった。
 それで、何となく今回の滞在は前の島でのことを踏まえた、ナミさんなりの気遣いなのだろうと分かってしまった。
 サンジはその優しさに胸がきゅんとなるのを感じながら、やっぱり女性はいいなぁとふらふらナミの後を追いかけた。
 こうなったら息抜きにナミさんやロビンちゃんと街で優雅にお茶の場でも設けたいものだ。
 しかし、ナミは船の下で待っていたロビンを見つけると、「折角だからロビンと2人でショッピングでも楽しんでくるわ」と、軽やかな足取りで船を下りて行く。
 自分もご一緒していいですか・・・と言いかけた口をふと噤んだのは、女性2人の買い物に男が付いていくのも悪い気がしたのが半分。
 もう半分は、目の端にノコノコ船を下りて行くゾロの姿を見つけたからだ。
 あの馬鹿、1人でふらふら船を下りたら直ぐに迷子になるくせに!!
「じゃあ、待ち合わせは3日後にね。各自ホテル取るなり、船で休むなりしてちょうだい!」
 慌ててゾロを追いかけようとしたところを、ナミに下から声をかけられ、思わず反射的ににこやかな笑顔で大きく手を振り返してしまった。
「ナミさんもロビンちゃんも気を付けて!」
「それはサンジ君の方でしょう!」
 恐らく前の島でのことを言外に含んでいるのだろう。
 仲間達が前の島でのことをどう認識しているのかサンジはよく知らない。
 自分からは事が事なだけに何の説明もしていない。
 事のつまりゾロとの間にあったことはうまく隠せているはずなのだが、一時的に変な輩に掴まって脳を押さえつける首輪をつけられた事実は、当然皆知っていることだ。
 また変なことに巻き込まれないようにと言う心配と警告。
 ナミさんに言われてしまうと結構きつい。
 苦笑いで返しながら、サンジはナミとロビンが道の先に消えていくのを見送った。
 見送った後でハッとして、2人とは反対方向に歩いて行っていたゾロのことを思い出し、船の上から探してみたが、もうその姿はどこかへ消えてしまった後だった。
「全く・・・折角のチャンスなんだ・・・・・・デートにぐらい誘えよな・・・・・・」
 こんな機会滅多にあることではない。
 デートなんてものをゾロが仲良くする柄ではないのは分かっている。
 俺だって女の子とデートはしたいが、野郎となんてわざわざしたくもない。
 それでも、俺とあいつが恋人である以上、船を下りるなら下りるで、少しぐらい声をかけてくれてもいいだろうが・・・なんてことを考えてしまった。
 もしかしたら、ゾロにとって俺はどうでもいい存在なのかもしれない。
 俺だけが1人舞い上がっていて、ゾロにとってみれば、あの首輪が外れたのだって、罪悪感の延長で派生した感情を強引に「好き」と言うものに変えただけの可能性だって十分にある。
「何か1人でバカみてえだ・・・俺・・・」
 ズキリと胸が痛む。






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 1話ぐらいで終わるかなーと思ったんですが、もう少し続きそうな感じかな?

 
 
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