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黄昏永久の迷い星1

2013.01.07 08:32|Novels
 なあ-----------------ロ------------。
 何で人は、人を求めるように出来てんのかな?
 知るか! ただ、そんなことばかりやってるテメエが人を求める資格はねえ。
 ハハッ。そうだな・・・。


 テメエは俺を甘やかさない。


 コツン。
 直ぐ近くで何かを置いたような、小さな小さな音がした。




 黄昏永久の迷い星




「テメエが寝坊とは珍しい。どこにしけ込んでやがったんだ?」
 何とか遅刻せずに勤務開始時間には間に合った。
 だが、いつも決められたそれよりも大分早い時間に出勤して来ているサンジなだけに、今日は遅刻ギリギリだったことを容易く同僚のコック達に見咎められてしまった。
 しかも、丁度書き入れ時の真っ最中だったため、余計に目立ったらしい。
 確かにイベントごとがあって店が忙しい時は、元々早めに店に出ているところを更に早めてサンジは顔を出す。
 今までがそうだったため、遅刻ではないものの、サンジのそれは極めて不自然だったようだ。
「別にどこだっていいだろう」
 だからと言ってプライベートまで踏み込んで来られたくもない。
 幼い頃から見知ったメンバーなので、割と容赦ない質問は次々と飛んでくる。
「寝坊ってことは相当激しかったのか?」
 しかも、女性従業員が1人もいない、男だらけの職場ともなれば、遠慮や恥じらいなども一切ないのだ。
「あー、まあなー」
 適当に相槌を打ちながらロッカーを開け、ハンガーにジャケットをかける。
 シャツの上からきっちりとコックコートを着込んだところで、何だか不躾な視線があちこちから飛んできていることに気付いた。
 人の体に情事の痕でも探して、後でネタにでもする気なんだろう。
 プライベートも何もありはしない分、昔、俺がやらかしたことのネタもばっちりと掴まれてしまっているので性質が悪い。
「てか、フラれたし、俺」
 面倒なので、毎年そう返すようにお馴染みのことを口にすれば、ただでさえ狭いロッカールームは笑い声に包まれた。
「ぎゃーはっはっは。流石のサンジだな。お前何回クリスマスにフラれればいいんだよ!」
 何回・・・はて?
 本当に何回だっただろうか?
 一度クリスマスにばっちりフラれ、その時はかなり引き摺ったせいか、ここのコック連中にはすっかりネタにされてしまっているのだ。
 それ以来、毎年毎年人のクリスマス事情にここの連中は首を突っ込んでくるものだから、真面目に返すのも面倒になって毎年フラれたことにしていたのは自分だ。
 いい加減、流石に可笑しいだろうと気付かれそうなところを、ここの連中は俺の言うことを全く疑いもせず、囃し立てる。
「うっせー! テメエ等3枚におろされてえのか!!」
 乱暴にロッカーを閉めて怒鳴ってみたものの、それすら連中を調子づかせる要素にしかならなかったらしい。
 人の肩に馴れ馴れしく腕を回して慰めて来ようとする者。
 バンバンと人の背を景気づけに叩いてくる者。
 中にはちょっとした小躍りを披露し始める者までいる始末だ。
 サンジは本気でムカつきながらも、賑やかで騒々しいこの光景を結局作り出したのは自分で、案外これを毎年見るためにフラれ続けているのかもしれないとも思った。
 そう考えてみると少し気が楽になる。
 でも、やはり一応、ショックはショックなのだ。
 サンジがポケットから金色のライターを取り出し煙草に火を点けている間に、連中はサンジをネタにした替え歌まで披露し始めていた。
 毎年結局は同じ展開になるのだが、こいつ等も相変わらず懲りない。
 書き入れ時最終日。
 クリスマスの朝。
 バラティエのロッカールームが断末魔の叫びで満たされるのもまた、毎年のことなのだ。



 その日は前日のイブより更に落ち着いて、考えていたよりも早くに仕事を終えることが出来た。
 クリスマスなんてもんは、何故か前日のイブの方が持て囃されて、今や単なるオマケ程度になり始めている。
 なので、正確に言えば、クリスマスにフラれ続けているのではなく、その前日であるイブの日に自分はフラれ続けていると言うことになるのだが、そんな小さなことを気にしたところで、フラれた事実は変わらない。
「フラれたっつーか、フッたっつーか・・・」
 一体どっちだろうか? と考えれば、やはりフラれたんじゃないだろうかと思う。
「あいつ頭いいからなー。普段は単なる鳩好きなんだけどなぁ・・・・・・」
 俺の返答を分かって「俺と一緒に来ないか?」なんてことを、あいつは口にしたのだ。
 それぐらい、狡猾な部分がある男であるのと同時に、あいつの鳩に向けた執着心は異常だ! とか、帽子への執着心もルフィやロー並みだ! なんて、思い切りどうでもいいことまで思い出してしまった。
 もうあいつ等、帽子同盟でも組めばいいんじゃないだろうか?
 頭が自然と癒しを求めているのか、陰鬱な気分を自分の唐突に切り替わった思考が見事に追い払ってくれた。
 

 家の門の前に誰かが立っていた。
 また鳩か? と思いもしたが、どうやらシルエットが鳩ではない。
 頭の辺りの不自然な突起物。
 鳩が止まるには丁度良さそうだ。
 まさか、あの突起物も帽子だったりなんてことはしないだろうか・・・。
 今の今まで帽子同盟のことを考えていたので、ついその流れでそんなことを考えてしまった。
 サンジが歩いて来たことに目ざとく気付いて男は直ぐに駆け寄ってくる。
 走り方がガニ股だ・・・なんて、やはりどうでもいいことが気になった。
 歩いている時はそうでもないんだけどなぁ・・・なんて、どこまでも広がり続ける本当にどうでもいい思考は半ば現実逃避の勢いに近いのかもしれない。
「何やってんだよ?」
 フランスパンなら鳩も食うかもしれねえなー。
 内心、ほとんど関係ないことを考えながら、サンジは近づいて来た男に怪訝そうな目を向けた。
「何って、眉毛が帰ってくるの待ってたんだけど」
「ストーカーか? 全くどいつもこいつも・・・最近流行ってんのかよ・・・・・・」
 ブツブツ言うサンジに苦笑こそしたが、フランスパンは不躾なサンジの言葉を大して気にしたようでもない。
「連絡しようと思ったら、俺連絡先聞いてなかったなーって思って、取りあえずストーカーしてみた」
「取りあえずストーカーって何だよ! つーか、あいつ等に聞けばいいだろうが!」
「それが2人して知らねえって言うし、お前等今までどうやって連絡取り合ってたんだ?」
 心底不思議そうに首を傾げたフランスパンを見て、サンジは何だか可笑しくなってきた。
「伝書鳩飛ばしてたんだよ」
「マジか!! すっげー!!! どうやるんだ、それ!」
 まさかのジョークをあっさり信じられてしまった。
 どんなギャップルールだよ・・・全く・・・。
「で、何の用だよ?」
 キリが無さそうなので、適当にその辺を歩きながらサンジは本題を促した。
 流石にパイナップルなあいつとは違って、家の中にこいつを招き入れる気はない。
「昨日は何してた?」
 気が付けば近場の小さな公園のところまで歩いて来ていた。
「どこの恋人同士の会話なんだよ、それ」
「うっせー、どうせ俺は失恋トリオだ」
 別に誰もテメエに恋人がいないことなんか気にしてねえよ!! と突っ込みたくなったが止めておいた。
 それこそ、トリオならぬ、コンビでこのまま漫才ちっくなやり取りを繰り広げる羽目になりそうだと思ったからだ。
 そもそも失恋してねえくせに、何でちゃっかりトリオ入りしているのかと、今となってはそこを突っ込むのも既に忘れられている始末だ。
 サンジはその辺のベンチに腰かけた。
「昨日、酒飲んだら意識ぶっ飛んでよ。気付いたら朝だった」
「おい、大丈夫か、それ?」
 灰皿があったので、煙草を取り出しポケットから取り出したライターでサンジは火を点けた。
 煙草の煙を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。
 何となく当たり前に取り出したライターをサンジは少し気にしたが、直ぐにポケットの中に押し込んだ。
「下から飲むと酒って更に強烈なんだな・・・」
 昨日の鳩に今日のフランスパン。
 何となく・・・本当に何となくだが、あまりにも出来過ぎているような気がする。
 それともこう言うことは重なるんだろうか?
 確かに悪いことは連続する。
 それなのに、良いことは続かないのだから、不公平なものだ。
「うん、まあ、俺相手に露骨な誘惑かけてくる奴ってのも新鮮と言うか・・・とんだ物好きもいたもんだ」
 相変わらず男の答えは飄々としている。
 全然乗っかって来ないから、掴みどころも無い。
 大抵俺がこう言うことを言えば、あっさり乗っかってくるか、嫌悪感を思い切り見せながら拒否するかのどちらかなのだが、この男はそのどちらでもないのだ。
「別に誘惑じゃねえよ」
 きっと、こいつは靡かないだろうと、分かり切っていた。
「じゃあ、何?」
「あんたの言葉がちらついて、昨日いろいろと中途半端になっちまった。男にとっては拷問みてえなもんだよな・・・って思って。だから、まあ、一種の仕返しだ」
「可愛い顔して言うじゃないか・・・ま、中途半端に出来るぐらいなら、いい感じに肩の力抜けて来たんだろ」
 やっぱりだ。
 こいつの言葉には否定がない。
 嘘が無いとか、虚飾が無いとか言うのとは、また少し違う。
 だから、話していて不快な気持ちにはならない。素直に言葉を受け入れられる。
 鳩に抱かれようとした場面で、こいつの言葉をふと思い出してしまったのは、そのせいもあるのだろう。
 今までにも俺を正論で諭して来ようとする奴はいたが、それが正しいと分かっていても俺はそれを受け入れられなかった。
 逆に反発を生んで、もっと状況を悪化させることだってあった。
 そいつ等とこいつで何が違うのだろう・・・とサンジは考えてみたが、よく分からなかった。
「で、あんたの用事何?」
 まさか本当に俺の昨晩の動向を聞きだすことだけが目的だとは思えない。
「確認に来ただけだ。明日、ちゃんと鍋パーティーするんだから、ちゃんと来いよ! 何なら俺が迎えに来てもいい」
 さり気ない気遣いが似合わない男だと感じた。
 最後に付け足されたかっこいいはずの台詞が、いかにも感を装いすぎていて少し笑ってしまう。
「いい。ちゃんと行くさ。逃げねえし・・・俺にはあいつとのこと・・・責任があるからさ・・・」
 フランスパンが声を立てて笑った。
「あいつも同じこと言ってたぜ」
 ほら、不思議だ。
 やはり嫌な気分にはならなかった。 
 


 





(おい、お前何か話せよい)
(何かって何だよ!お前の方が話せ!)
 
 1つの鍋を取り囲んでコタツに足を突っ込みながら、見えない部分で水面下の熾烈な攻防が繰り広げられている。
 コタツの中で足を蹴り合うと言う、非常に地味な攻防なのだが、互いに真剣だ。
 何せ、本来ならクリスマスパーティーにあやかった、とても和やかで楽しい席になるはずの場面を現在満たしているのは重苦しい沈黙なのである。
 鍋を囲んでフランスパンとパイナップルが向い合せ。
 フランスパンとパイナップルにとっては可愛い弟分であるサンジの元カレ? である男がサンジと向い合せになり、席についていた。
 サンジと弟分の表情はひたすら固い。
 それだけでなく言葉1つ発しないものだから、フランスパンとパイナップルは困り切って、現在コタツの中で過酷な激闘を繰り広げているわけである。
 当然会話はアイコンタクトだ。
 何が悲しくて、自分の恋人ではない男と、アイコンタクトでやり取りをしなければいけないのか。
 そもそも、クリスマスに乗じた1日遅れのパーティーが、男4人で鍋だなんて、寂しいを通り越して絵面的にとても居た堪れない。
「えっと、じゃあ・・・取りあえず乾杯でもすっか!」
 水面下での攻防に押し負けたわけではないが、場の空気にいよいよ耐えられなくなったフランスパンがわざとらしい陽気な声と共に目の前のグラスを手に取った。
 皆もそれに合わせてグラスに一応手をつける。
「では、ここに集いし失恋トリオの・・・いや、カルテットか?・・・の前途を祝して・・・か、乾杯っ!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

 場に更なる沈黙が広がった。

「・・・って、何でテメエまで沈黙してんだよ!!!!!!」
「いや、空気読んだ方がいいかと思ってよい」
「パイナップルのくせに、何パイナップルみたいなこと考えてんだよ!!!」
「どんなパイナップルだよい」
 フランスパンは憤り露わにパイナップルの頭をポカリと一発殴り、続けてサンジと弟分の頭も景気よく殴っておいた。
 大抵これで反応は戻るはずなのだが、どうも一筋縄では行かない連中のせいか、パイナップルはともかく、眉毛も弟分も殴られた頭を押さえこそしたもののやはり沈黙のままである。
 フランスパンは困り果てた。
 今までこのノリのいい性格から何度も宴会の指揮を頼まれたことがあり、この手のことには慣れている。
 それが仲の悪い相手同士だったとしても見事に場を取りまとめ、明るさを取り戻し、賑わいに包んで来た百戦錬磨のフランスパンを唸らせる空気の悪さ。
 そもそも、考えてみれば、事情はよく知らないとは言え、こいつ等、被害者と加害者なわけで・・・まあ、何のって・・・そりゃ性的犯罪のか?・・・と今頃になって思い出すところあたり、自分はアホなのか? アホなんだな? と突っ込みたい気分である。
「アホだよい」
「だああああああああ、俺の心の声を読むなああああああああ!!!!」
 全く日頃からクール気取って、「よいよい」言ってるだけの奴はいいよな・・・と、この時ばかりは友人のその性格を羨ましく思った。
 しかし、これはどうにかしないと、場の空気が持たない。
 いや、もう現時点で場の空気など、とっくに崩壊して酸素不足で呼吸さえままらないぐらいの圧迫感がある・・・。
 せめて自分が細かい事情を知っていればもう少しうまく立ち回ることも出来たのだろうが。
 いやいや、この場合は知らぬが吉と言う場合も・・・・・・。
 そもそも、眉毛も弟分も、普段はノリのいい性格してるくせに、何でこんな時ばかりしおらしく気まずさ振る舞って2人して押し黙ってんだよ!! と愚痴りたい気分でもある。
「まあ、とにかく鍋でも食べるよい」
 助け舟だったのか、純粋に腹が減っただけなのか、パイナップルのその一言で何とか食事にはありつけそうだったが、このままではマズイ。
 マズすぎる。
 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャ~ン、なんて勢いで、もう誰でもいいからこの場の空気変えてくれよ!! なんて、他人任せの願いをフランスパンが脳裏に思い描いた瞬間だった。
 
「は~い、皆、赤髪のサンタさんだよ。今日は皆にクリスマスプレゼントを届けに来た! と見せかけて、タダ酒を飲みに来たよ!」

 バンと行き成りドアが開いたかと思ったら、廊下の方から赤い髪の不審者が、素っ頓狂なテンションで姿を現した。






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 新年初更新がこれって・・・。
 またお付き合いいただければ嬉しいです。

 
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