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星闇永久の迷い星5

2012.12.28 17:48|Novels
 目が覚めた。
 少し寒いと思い布団を引き寄せたら、何となく自室のベッドの感覚と違う。
 室内を見回して少し考えれば、目覚めはやけにすっきりしていたので、寝ぼけるわけでもなく、直ぐに自分がどうしてここにいるのかを思い出した。
 どうやらまた俺は気を失ってしまったらしい。
 性的な絡み合いを持とうとすると、俺は肝心なところで毎回意識を失ってしまう。
 これだけは、自分でどうにか出来ることではないのでどんなに意識を保っていようと努力しても無駄なことだ。
 サンジは今までにも相手を何度も変えながら様々な方法を試してみたが、肝心なものの挿入を伴った時点で訳が分からなくなる。
 そうして、意識が飛ぶのは既にサンジにとっては当たり前の事象だった。
 それでも、好きだと言う証拠のために、俺を抱いて見せろとあいつに突き付けたのは自分なのだ。
 大抵の奴はサンジが意識を飛ばした時点で興醒めしてしまう。
 なので、中途半端な挿入だけではなく、しっかり俺の奥まで突っ込みその深くで果てたことのある奴は案外少ない。
 体の感覚から、今回も入れられはしたが、その挿入は深いところまで届かず、行為と言う行為にも至らなかったのだろうとサンジは判断した。
 男が男に抱かれると、その反動は凄まじいものだ。
 入口が焼け付くようにヒリつき、何をしていても内部で蠢く精の感覚は露骨だ。
 そのうち腹はゴロゴロいい始めるし、腰や足だって鈍く痛む。
 その一切が無いのだから、少し入ったとは言え、サンジにとってそれはちゃんとした性交渉と断定できるものではない。
「やっぱり出来ねーんじゃないか・・・」
 どいつもこいつも・・・と悪態を吐きたくなる。
 まあ、それも抱く側の気持ちを考えれば分からないことでもないのだが。
 そのことを考えれば赤髪のおっさんはやることまで散々やってくれちまって、ある意味で偉大だったのだろう。
 それにしても流石に今回の邂逅は正直気分が悪い。
 確かに薄々予想していた部分があったからこそサンジはもしかして・・・と思い、パイナップル頭を誘惑したのだが、その誘惑すら自分でも無意識のものに近かった。
 今回出会ってしまった人物を、パイナップル頭と接触することで導き出したいと言う気持ちもあるにはあったのかもしれないが、はっきりと断定はしていなかったし、自分がパイナップル頭を誘惑することで、どんなことになるか・・・などと言うことは、ほとんど考えていなかった。
 こんな、自分ですら予測不可能な自身の行動・・・。
 その行動の理由を必死に考えてみようとするが、やはりよく分からない。
 体を起こせばシャツ1枚引っかけられているだけであるため、12月の厳しくなり始めた寒さが身に染みた。
 そう言えば、結局あいつはどうしたのだろうか?
 漸く自分を抱こうとした自分にとってはの、「元」恋人のことを思い出したサンジだが、室内には誰の姿もない。
 すると、見計らったかのように寝室のドアが開いて、誰かが顔を覗かせた。
 起き上がっているサンジを見ると、そいつは少し気まずそうにしながらも、室内に入って来る。
 一度見たら忘れられない、フランスパンを頭に乗っけたようにも見える、リーゼント男だった。
「あいつ等追い出したから心配すんな」
 あいつ等?
 あの場に元恋人以外誰かいただろうか? とサンジは考えたが自分の記憶の中にはない。
 ただ、ここが誰のマンションであるかとか、ここに今日足を運んだ理由とかを考えれば、直ぐにもう1人が誰であるか分かった。
 ・・・となると、フランスパンの言い方は思い切り可笑しい。
 何故ならここは、フランスパンが追い出したらしいあいつ等のうちの1人、パイナップル頭のマンションであるからだ。
 まるで、自分の家のような言い方をしてくるフランスパンにほんの少し笑って、サンジは視線を落とした。
「鍋・・・パーティー・・・悪い。台無しにしちまった」
「何でお前が謝るんだよ」
 そう言ってくると言うことは、ここで何があったのかこの男は知っているのだろう。
「何となく・・・」
 ハハッと男が声を上げて笑った。
 その笑い声に幾分か救われてサンジは胸を撫で下ろす。
「まあ、何があったかは知らないが、あいつ等にはよーく言い聞かせておいたから、もう心配すんな。今度あいつ等に酷いことされた俺に言え! ぎったんぎったんに成敗してやる」
 根本にあることは、とてもじゃないが笑えることでも、明るく言うようなことでもない。
 だが、フランスパンのサバサバとした物言いは不快感を与えるでもなく、サンジは素直にその言葉を受け入れられた。
 そもそも、知らないと言いながら、よく言い聞かせておいたなどと言う、単純な矛盾に自分で気付いていないのだから、その点にフランスパンのちょっとした動揺が見てとれて、それはそれで可笑しい。
 それにしても、どうして、「あいつ等」になっているのだろうか?
 フランスパンの言い方では、元恋人と、もう1人・・・恐らくパイナップル頭までが俺に酷いことをしたようなニュアンスに聞こえないでもない。
 自分の気のせいだろうか?
 それとも、今日のことだけではなく、その少し前に俺があいつに迫ったことが筒抜けになっているのか・・・。
 一見軽そうなのだが、それでも会話などしてみた感覚では、あのパイナップルは、余計なお喋りをする男にも思えない。
 少しだけそんなことを真剣に考えてしまったが、ハッとしてサンジは慌てて訂正した。
「あいつ等は悪くねえよ。全部俺が焚き付けたんだ!」
 サンジは本当のことを口にしただけなのだが、フランスパンはサンジの言葉を信じた様子もなく、何故か目元を拭いながら、うんうんと頷いてくる。
「あいつ等庇ってやるなんて、お前健気で優しい奴なんだな・・・・・・」
 何だか自分の知らないところで、可笑しな俺のイメージが出来上がってしまっているらしい。
 今回のことも自分が焚き付けた手前、そのことであいつ等がこのフランスパンからそう言う目で見られるのは、やはり気の毒だ。
 サンジは何もあいつ等とこいつの関係を崩してしまいたかったわけではない。
 何とか誤解を解いてやらなくてはと思い、サンジは中途半端に引っかかっていたシャツのボタンを取る。
 そして肩を誘惑するように見せて布団の中から這い出すと、猫のように体をしならせてフランスパンに顔を近づけ、莞爾として笑んだ。
「なあ、あんたは俺を抱ける?」
 唇と唇の位置は近い。
 あと半歩分距離を狭めれば、自然と唇は重なるだろう。
 男は怯むでもなく微動だにせずにサンジを見下ろした。
「抱こうと思えばな」
 驚きを宿すでもなく、淡々とした返答がまともに返ってくる。
「何で?」
「何でってなぁ・・・そこまで悪くない面してっし、別にその気になれば男でも構わねえってことだ」
「じゃあ、抱いてくれ」
 今度は露骨な溜息が返った。
「そんな風にあいつ等にも迫ったのか?」
 男のその一言で、サンジは一気に興醒めした。
 何だ、気付いてたんじゃないか・・・と言いたい気持ちを押さえて大人しくベッドの上に座り込む。
 飄々としているくせに・・・案外鋭い。そしてその鋭さを表に普段見せないところを見ると、どうやらこいつもパイナップルと同じタイプの人間らしい。
 そんな相手にどんな誘惑を持ちかけ、口封じを企てたところで無駄だろう。
 パイナップルと似てはいるが、こいつはパイナップルよりも直情的なところがありそうな分、下手すればこっちのテンポを狂わされそうだ。
「まあ、どうせ誰も俺を抱けはしねえんだけどな・・・」
 サンジは誘惑するのを諦めてゴロリとベッドの上に寝そべった。
 自分ではずしたシャツのボタンを留めなければ胸元に散っているキスマークが丸見えだったが、そんなことを気にするのも、もう面倒くさかった。
 男はさっさとこの場から立ち去るかと思えば、ベッド脇の椅子に年寄りくさい掛け声と共に座り込んでくる。
 サンジは男に背を向けた。
 何か話があるのだろうと分かったからだ。
 そして、その話は真っ直ぐに顔を見て話せるものではないだろうと、何となく判断した。
 自分からそう言うニュアンスのことを持ちかけておきながらだが、いざその類の話になるのは嫌だった。
 だが、露骨な拒絶を示すのも滑稽なので、敢えて聞く態勢だけを整えたのだ。
「何焦ってんのか知んねえけど、抱かれたい意思もないのにそんなこと口にしてっから、抱かれる感覚が無くなるんだ。相手は皆、お前を真剣に抱こうとする。なら、お前も一度ぐらい真剣に誰かに抱かれてみろ」
 時代錯誤なリーゼント頭のくせにやけにかっこいい台詞だ。
 しかも、妙に知ったかぶりの・・・かと思えば的を射たことを言ってくる。
 何らかのことをあいつ等から聞いたのだろうか?
 元からサンジは返答など返す気はなく、黙り込んだまま、ただ耳だけを傾けた。
「ただし、真剣に抱かれるって言うのは自分が心から望む相手とだけだ。無理にそうしなきゃいけねえって考えること自体、やりたくねえってことだ。今のお前の誘惑もその類だろう? 無理してまでそうする必要はどこにもない」
 言い切った男に言わせるだけ言わせておこうかと思ったが、あまりにも的確なところを辿ってくるので気持ちが悪くなった。
 相手には背を向けているのだから、表情など見られているはずもないのに、それでも何だか落ち着かなくてサンジは自分の顔を腕で覆う。
 そうして、おずおずと口を開いた。
「でも、付き合ってりゃ、こっちはやりたくなくても、相手はやりたくなるだろう?」
「そりゃそうだ。付き合うってことは体の関係だってその延長線上にある。皆、口に出しこそしないが、そのことは頭に入れて付き合いってもんを始めるもんだ。逆に言や、つまり何で、やりたくもねえのに、お前は人と無理に関係を持とうとするんだ?」
「何でって・・・・・・」
 何でだろう?
 直ぐに答えが出て来ずに口籠る。
 暫し沈黙が落ちた。
 フランスパンは答えを急かして来なかったので、サンジには十分に考える時間がある。
 このまま答えを口にせずとも、男は何も気にしなかっただろう。
 だが、サンジは真剣に考えてみた。
 今まで何となく、無意識に人から人の間を渡り歩いていたのだが、考えてみればそれには理由があったはずだ。
 自分でもその理由をパッと示せないと言うのは、今更可笑しなものだとサンジは気付いた。
 結局答えは出て来ない。
「今は分からなくても、お前はちゃんと答えを知っているはずだ」
 答え?
 本当に知っているのだろうか?
 拗ねたように背向けているサンジの後頭部に男の手が触れてきた。
 少し嫌だなあ・・・とサンジは思ったが、その手は全く性的な目的を持っていなかったので露骨にホッとする。
 ただ、子供にそうするよう、あやすように頭を撫でてくる手をサンジは自然と受け入れた。
 リーゼント頭だったり、不良を絵に描いたような強面だったりしなければ、案外幼稚園の先生とか向いてるんじゃないだろうか?
「恋人にフラれたからってそんな風に躍起にならなくったって・・・友人だってお前にはいるんじゃないのか? 腐れ縁でも喧嘩友達でもいい。素の自分を出せて、何でも言い合える。自分を作らなくていい・・・そんな奴だ・・・。いないんだったら、今からでも作ればいいさ」
 男の宥める言葉に、ああ、そうかとサンジは思い出した。
 俺って、あいつにフラれたんだった・・・。
 フラれて・・・1人になった。
 1人になったから、何となく今度は鳥に迫った。
 1人は嫌だから、俺はいつだって次の相手を直ぐに探して求める。
 ずっとそんなことをいつからか繰り返して来たのだ。
「今は休め。明日仕事だろ・・・・・・」
 上から布団をかけられる。
「あいつ等にはお灸据えといたから、安心しろ。まあ、その・・・本当に俺は何があったのかとか、そう言うのは聞いてねえから・・・気にすんな・・・って、いや、気にしないのもどうかと思うが、とにかく寝て忘れちまえ。あいつ等には今度謝りに行かせる」
 だから、何であいつ等?
 どうしてパイナップルも含まれているのかと、問おうかと思ったが、もうあまりこのことについては自分からも口にしたくなかった。
 ポンポンと布団の上から体を叩いてくる手に気付き、あの鳥といい、こいつといい、どれだけ俺を子供扱いなんだよ・・・とむくれたくもなったが、何だかもう、1つ1つのことをあまり気にし過ぎるのも疲れてしまった。
 ああ、でも、本当に悪いことしちまった。
 折角のクリスマスに託けた鍋パーティーだったと言うのに。
 今日は23日だから、女子高生の言葉を借りるとクリスマスイブイブなわけだ。
 イブのイブは年に一度しか来ないのだ。
 それなのに、あいつ等はフランスパンに怒られて、散々だったんだろうなと思うと、何だか申し訳ない。
 だが、俺がどんなにあいつのフォローに回ったところで、受ける側だったせいで俺の方が完全に悪いと貶める展開にはならないのだろう。
「鍋・・・・・・食いたかった・・・・・・」
 頭がゴチャゴチャしている。
 だから、サンジは今自分が一番してみたいことを口にしてみた。
 思わず笑いを堪えたような音がした。
 サンジは布団を頭から被り込んでいるので、直ぐ傍にまだいるはずのリーゼントがどんな反応をしているのか分からなかったが、予想では腹を抱えて今、必死に噴き出しそうな可笑しさを堪えているはずだ。
「ハハッ、分かった分かった。流石にイブとクリスマスは無理だが、26日なら皆、集まれるんじゃねえか?」
 別にサンジは、今日お流れになってしまった鍋パーティーの催促をしたわけではなかったが、リーゼントはそう受け取ったらしい。
「・・・26日・・・・・・あいつ等来るかな?」
 あいつ等と言うより自分の方も、今日の鍋パーティーメンバーでは少々問題がある。
 だが、このままでいいはずがないのも確かで、いつまでも有耶無耶にしておいては、また俺はそばかすの浮いた顔で魅力的に笑うあの男を傷つけてしまうだろう。
「そんな軟な奴等じゃねえよ」
 男のそんな答えに、確かにそうだな・・・と、サンジは妙に納得した。
「お前が持って来たんだろ? キッチンに置いてあった食材はちゃんと加工しておいたから26日まではもつはずだ」
「優しいのな・・・。昔の不良みてーに捨てられてる猫とか放っておけないタイプだろ?」
「何だよ、悪いのか?」
 どうやら図星だったらしい。
 サンジは布団の中で少し笑って、それからそっとまた目を閉じた。
 こいつにとって、今の俺は捨てられた猫のようなものなのだろう。


 会いたいよ・・・。
 誰に?
 会いたい。
 ・・・会いたい。



 ああ、誰のことだよ・・・全く。
 バカ・・・アホ・・・・・・。
 間抜け・・・・・・。



(いい加減にしろ、テメエ!!! いつまで腑抜けてやがる)
(煩い!! テメエには関係ないだろうが!!!)
(関係あるもねえも、テメエが学校に来やがらねえから、俺に1人にとばっちりが来てんだよ)
(そんなの完全に自分都合だろうが! 俺を巻き込むな!!)
(だからって、テメエは一生ココに篭ってるつもりなのか?)
(出たくねえんだから、仕方ねえだろう。もう俺に関わるな。お前なんか嫌いだ)
(嫌いで結構。ま、確かに学校来ねえのはテメエの勝手だ。留年したら、俺が先輩として上から見下してやるから、せいぜい覚悟しとけ)
(ああ? 何でお前が俺の先輩にならなきゃなんねーんだよ!)
(このまま行けば、普通にそうなるだろうが!)
(冗談じゃねえ、お前に先輩面されるのなんてごめんだ!)
(自室から一歩も出てこれねえんじゃ、時間の問題だろ?)
(そこまで言うんなら、見てろ! 明日は学校行ってやるんだからな)
(ほーお、そりゃ楽しみなことだ。ナミと賭けでもして、テメエが来ない方に全財産賭けてやる)
(なら、俺は明日学校へ行く方に全財産だ!)
(何でお前が自分で賭けてんだよ。そりゃ卑怯だろうが)
(じゃあ、ウソップかルフィに賭けさせろ!)
(アホか)
(アホじゃねえ! バカバーカ)
(ああ? 俺がバカならテメエは大バカだ)







「で、そっちの様子はどうだよい」
「あー、何か意外と落ち着いてる。また寝たっぽいけど、そこまでダメージはなさそうだ。まあ、表面上だけかもしれないけどな」
 携帯越しに聞こえてくる友人の声にリーゼントは声を潜めて返した。
 しっかり眠りについたのは確認したが、それが演技で聞き耳を立てられていたら、少々まずい。
「それより、そっちの方はどうだ? 落ち着いたか?」
「こっちは完全に駄目だよい。何聞いても、何言っても一言も喋らないし・・・・・・」
「全く、何が一体どうなってんだよ・・・俺にも分かりやすく説明しろってんだ。あ、あまり長ったらしく説明されても余計分からねえから30文字以内でよろしく」
「お前のアパート、古くて寒いんだけど、暖房つけていいかよい?」
「思い切り無視すんなああああ!!!!!しかもさり気に失礼だぞ、テメエ!!!」
 思わず声を荒げてしまい、背後を確認する羽目になった。
 眉毛が起きた様子はない。
「とにかく、26日、再鍋パーティー予定だから、お前等2人、そん時にちゃんと謝れよ」
「俺は無実だよい」
「ああ? でもお前の嫁だろ?」
「だから、嫁じゃないよい」
「どうでもいいから、ちゃんとそっち引っ張って来いよ。訳ありなら余計に放置しておいていい問題じゃないだろう。お前の責任でもあるんだからな」
「それを言われると、厳しいよい」
「俺は、変に隠したりするのは嫌いなの」
「分かったよい・・・」
 友人の小さな溜息までもを携帯は拾い上げた。
「じゃあ、そう言うことで。部屋は勝手に使っていいけど、暖房はつけるなよ! 電気代今月ヤバいんだからな」
「お言葉に甘えて遠慮なくつけさせてもらうよい」
「お前人の言ってること聞いてる?」
「あ、エロ本発見! ブロンド好みかよい」
「何勝手に見てんだあああ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・お前こそ眉毛襲うなよい」
「襲うかっっ!!!!!」
 乱暴に電話を切って携帯をソファの上に投げる。
 全くどいつもこいつも自分勝手と言うか、何と言うか。
 流石に疲れてソファに腰を落とせば、直ぐに睡魔がやって来た。
 時計の針は丁度日が変わったところ辺りを示している。
 クリスマスイブだ。
 結局今年も恋人のいない寂しいクリスマスを迎えてしまう羽目になりそうだ。
 しかし、何でイブの日に、色恋沙汰に巻き込まれなくちゃいけないのか。
 皆、いろいろ恋愛事情はあるのだろうが、せめてクリスマスぐらい幸せな笑顔に包まれていてほしいものだと思う。

 可愛い弟分があんなに憔悴しきった顔は初めて見た。
 パイナップルの方も、どこか可笑しい。
 空元気・・・と言った感が見え見えなのだ。
 これも付き合いが長いからこそ分かることで、他の奴等は決して気付かないだろう。
 寝室のドアが開いた音がした。
 どうやら眉毛が起きたらしい。
 そのままマンションを出て行くかと思えば、洗面所の方へ向かったらしかった。
 水を流す音の中にほんの少し嫌な音が交ざっていた。
 やはり平気そうに見せていたのは表面上だけだったらしい。
 相当精神的に参っているのだろう。
 咳き込みと、えづきを繰り返す、そんな音だ。
 心配になって様子を見に行こうかと男は思ったが、考え直し止めておいた。
 何も関係ない俺に深入りされたところで、その心が癒されるわけではないだろう。


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