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Sirius9

2011.06.22 17:54|Novels
Sirius9
 ゾロに抱かれた。
 どうして、こんなことになったのかその経緯はよく覚えていない。ただ雰囲気に呑まれたのかもしれないし、あの日の出来事や過去の自分を何かで上書きしたかったのかもしれない。
 だけど、俺は散々に取り乱して弱さを見せて、そして最後にはあのゾロの背に縋りついた。
 ゾロは俺からいろんなことを聞き出そうとする。知られたくなくて今まで必死に閉ざして来たことは、行為の中、熱に浮かされるよう、弱さに翻弄されるよう口から滑り出た。それはとても屈辱に満ちたことだと思ったが、どうしてか俺はどこかでホッとしていた。
 その安堵がどこから来るものなのか分からない。ただ、それは何か予感めいていて、誰かの言葉を思い出すように背筋が冷たくなった。俺の中にある思考、いや意識の、何かが矛盾しているのだと気付きかけていた。
 あいつに気を許したわけではなかった。ただ、あいつが酷く不安そうな目で俺を見るから、何となく放っておけなくなった。あんな顔をするなら抱かなければ良かったのに。そう思う反面、あいつらしい行動だとも思った。
 ふと、あいつは俺のことを救いたかったのかな? とも考えたが、それはやけに自分都合すぎるような気がして首を振った。でも、あいつは不器用だと思う。そんな男だと。
 もしかしたらあいつは俺の後ろに誰かを見ていたのかもしれない。俺を見て思い出す人がいたのかもしれない。あいつのらしくない気遣いや、酷く抱くだけ抱けばいいのに、時々見せた優しさが、俺には不可解で、だけど心地よかった。始めて知る感情だと思った。
 あいつは何にあんなに怯えているのかな? と思う。俺を抱く時々で見せた、あの痛ましい表情。酷いことをされているのは俺の方なのに、どうしてか庇護欲を駆り立てられた。そう言えば今更だけど、俺は麦わらの一味に入る前にあいつがどこで何をしていて、どう言う人生を送っていたのかなんて全く知らないんだな・・・と気付いた。
 漏らした事実にあいつはどう思っただろう。もう愛想をつかしただろうか? あいつが俺を抱くのは哀れみか? 同情か? それとも興味本位か?
 あるいは、自己満足の類なのか。単なる処理なのか。激情だったと言う可能性もある。
 分からない。
 だけど、俺はあいつに抱かれながら浅ましい声を出してしまった。今まで抱かれながら声を上げたことはなかった。声をあげると何だか自分が完全に男に屈してしまったようで嫌だった。俺にとって快楽は痛みでしかなかった。
 だけど思わずあげてしまった声に善がっているのだと、誰にでもそうなのだと思われただろうか? 何となくそれは嫌だな、と思った。
 ゾロに抱かれて声をあげる自分を浅ましいと思う。あんな声なんて聞かせたくなかった。悲鳴じみた嬌声など。
 何だか少し疲れちまった。
 俺は女じゃないんだ。何だろう、ほんと疲れっちまったなぁ・・・・・・。
 体も何だか痛ぇし・・・っつーか、あのくそマリモ、容赦なさすぎなんだよ。いくら俺でも辛いっつーの。
 あいつもしかしてまた俺のこと抱く気でいるのかな? 声あげたくねぇ~な~、もう。
(どうして声は聞こえたんだろうね?)
 あいつの口からあいつの思いを聞くのも怖ぇし。これであっさり背を向けられたら、俺バカみてーじゃん。
 少し前までゾロはそう言う対象にいなかった。もしこう言う関係になったとしたら、俺は本気で舌を噛み切って死に兼ねないほどの嫌悪を抱いていた。だけど、実際はそこまで悪くはなかったかな・・・と思う。
 仲間内で、ああ見えて俺に一番近い相手だったからかもしれない。そう思う反面、一番俺には遠い相手だとも思う。
(幸福には絶望、愛情には憎しみ、喜びには哀しみ・・・誰かを愛しいと思えばそれは・・・・を・・・呼ぶ・・・よ)
 何だか頭も痛ぇ。さっきから変な声が木霊していく。気持ち悪い。
 あー、くそ・・・マリモ、アホマリモ、マリモバカ・・・バカマリモ・・・・・・。
 頭の中で勝手に響く声を消したくて、思いつく限りの悪口を並べ立てる。
(愛しい・・・シレ・・・ヌ・・・)
 ああ、何だか今、嫌なことを思い出した気がする。思い出したくなんかなかったなぁ・・・これもそれもあのバカが俺を抱いたりするから悪いんだ。最後まで酷く抱けばいいのに、途中で変な優しさなんかを見せるから悪いんだ。俺はそんな風に抱かれたことなんてないんだから、最初から最後までずっと酷くしてくれなきゃ困る。
 俺は酷くされることには慣れていても、優しくされることに慣れていないんだ。
 声・・・声が呼ぶのかな? そうだとするなら・・・俺は・・・・・・。
(誰かをずっと探している気がするんだ)
 パンッと何かが頭の中で弾けた。それ以上思考は浮かび上がらず、サンジの意識は深い底へとそのまま沈んでいった。
 


 目が覚めたら既に昼を回っていた。
 あ・・・れ?
 窓から差し込んでいるとっくに明るい日差しは、まだ完全に覚醒しきらない頭には強烈すぎる。その強烈さに最初は緩やかに、ある一定を越えたら急激に意識を覚醒させられて一瞬混乱した。
 キッチンではなく男部屋でしっかり寝ていたらしい様子に昨晩のことを直ぐ思い出し、慌てて体を見るが、自分はしっかり服を着ていてあの後ゾロがちゃんと後処理はやってくれたようだった。その点にはホッとしつつも、どうもやっちまった感が変に胸を焦がしていく。
 それにしても、久しぶりにこんなに長い時間、夢も見ずにぐっすり寝たなぁと、すっかり体の軽くなった様子に伸びをすれば、有り得ない場所から痛みが走り思わず声をあげかけてサンジは、あれ? と首を傾げた。
 何だかこう違和感があるのだが気のせいだろうか?声を出そうとした声が音にならなかったような。
 もしかして声帯をやっちまったかなぁ・・・でも何でだ? と考えて、自分はそれほどまでにゾロとの行為の最中、声を出しまくってしまったのだろうか?と一気にその時のことを思い出し赤面してしまったが、それにしては掠れた声も出ない様子を少し不思議に思った。
 あーあーあー。
 発声練習のつもりで口を大きく開けて見るが、ヒューと微かな空気の漏れが聞こえただけで、やはり音にはならない。
 あー、ちっとやべぇかもなぁ・・・と思いながらも、甲板から聞こえてくる賑やかなクルー達の声に、朝食作りはサボっちまったけど、まだ昼食は間に合うな・・・とサンジはのっそり起き上がった。
 ゾロがどう言い訳づけて皆に俺のことを話したかは知らないが、サンジが男部屋から顔を出すと皆が思い思いに声をかけて来た。
「サンジー、もういいのか?」
 ウソップと釣りをしていたルフィが逸早くサンジのことを見つけて、釣竿を放り投げて、ゴムの伸びる手をサンジの腰に絡ませて飛んでくる。あまりに反動が付いていたためルフィがサンジに特攻するような形になってしまい、足腰にまだ痛みが残って覚束ないサンジはそれを支えきれず思い切りルフィと一緒に転んでしまったが、それにルフィが訝るような顔をしながらも「悪ぃ悪ぃ!勢いつけすぎちまった」とルフィらしい大きな笑顔を見せて謝る様子にサンジは思い切り蹴りを食らわせてやった。
「何だよ、蹴ることねーじゃん」
 ・・・とルフィは拗ねた様子を見せるが、それでもどことなく嬉しそうだ。
 あー分かった、分かった。と言うようにサンジは手を翳してみせたが、ふとその自分の手にいつも見につけている手袋がないことに気付き、サンジはギクリとした。あのくそマリモ・・・流石にここまでは気が回らなかったか・・・と思いつつも、不自然にならない程度にパッと腕をズボンのポケットに突っ込む。
 サンジのいつもの戦闘スタイルが手を使わず蹴りだけでいく方針なので、サンジがポケットに両手を突っ込んでいることは、一見行儀悪く見えても、いつものことなのでこの船のクルー達は恐らく誰も気にしない。
 現にルフィも気にした様子はなかったが、どうやら別のことを不思議に思ったらしい。
「サンジ?」
 あのいつもおちゃらけているルフィに少し真剣味を帯びた声をかけられて、ギクリとしてサンジは笑ってみせた。
 キッチンを指して、飯作ってくる!と言う意思を見せ、さっさとその場を立ち去ろうとするが、幾ら鈍いルフィと言えどもやはり誤魔化しきれるものではないらしい。そうこうしているうちに、他のクルー達も次々とサンジの元へやって来て声をかけてきた。
 くそマリモの姿が見えないのは幸いだろうか。
 ルフィ同様に皆もサンジの様子がおかしいことに直ぐに気付いたらしい。まあ、俺が口を開かないなんて滅多にあることじゃねーしなぁ・・・と、こうなるといつも俺は無駄にどうでもいいことを喋りまくっていたんだな・・・と自覚する羽目になった。
 ルフィの腕がまたサンジの腰に絡みついてくる。
 だから、そこに抱きつかれると響くんだってよ・・・と言う、内心の悪態は声に出すつもりもないがどうせ声にもならない。なので、態度でルフィを自分から引き剥がそうとすれば、今度こそルフィが下から俺を見上げてくる。
 躊躇った様子もなくルフィは言った。
「サンジ・・・お前、声が出ないのか?」
 サンジは困ったように眉根を寄せて、それでも静かにヘラリと微笑んで見せた。


 煙草をぷかぷかと吹かす。白い煙は風に流れて青い海原に白い霧のように消えた。
 どうやら風邪を引いたみたいだ・・・・・・と、サンジは仲間達にそう誤魔化した。勿論声が全くでないので身振り手振り、それで分からなければウソップが気を利かせて俺にくれたメモ帳に文字を書いて伝える。
 だが、それも最初のうちは良かったが徐々に面倒になってきて、結局サンジは皆と距離をとって、ここで1人煙草を吸っている。皆の気遣いは分かるが、どうもこう居心地が悪い。何せ伝えたいことが全く音にならないのだ。声が出ないと言うのは案外しんどいものなんだな・・・と他人事のように思った。
 風邪・・・なんだろうか?まさか昨日素っ裸で明け方までゾロと抱き合っていたから間抜けにもそれで風邪引いたとか・・・そこまで考えて、いやいや・・・とサンジは首を振った。そもそも俺は風邪なんて引いたことがない。・・・って、これは何の根拠にもならないか。
 そうしていると、俺の声が出ないことを直ぐに聞きつけてきたのか、それともあの場にいた誰かに頼まれたのか、チョッパーが血相を変えてやってくるのが見えた。ご丁寧に診察する気満々の、医療道具の沢山詰まっているバッグを両手に抱えてだ。
「サンジーーー、声出ないって聞いた!!」
 チョッパーが大声でサンジに声をかけてくる。そのあまりの声の大きさに、思わず甲板でまだ眠りこけているらしかったゾロのことを気にするが、どうやらまだ目を覚ました様子はないのでホッとする。まあ、あれだけ俺を無茶苦茶に抱けば疲れも溜まって・・・と言うよりはむしろすっきりして眠りこけている類か?・・・と考えると、何だかもう次から次へと押し寄せる昨晩のことを思い出させる自分の思考にゲンナリしてしまった。
 手だけ上げて返すと、声が出ないってのは本当なのだとそれだけでチョッパーは察したようで、有無を言わさない態度でてきぱき診療道具を甲板の上に広げて行く様子に、もしかして俺はここで診察されるのか? と、どうにも人の目線がどこにあるかも分からない、しかも周囲は広大な海と言う開けっ広げた場所に頭を抱えた。
 取り合えず、医療室行こうぜ・・・と言うにも、これが困ったことに声が出ない。ウソップに貰ったメモは置いてきちまったしなぁと、サンジは意思表示に医療室を指さしてみたが、チョッパーは気付いた様子なく遠慮なくサンジの服を捲り上げようとする。
 そこでハッとした。そういや、出ない声のことですっかり忘れてしまっていたが、昨晩から今朝方にいたるまでゾロと行為に励んでいたのだ。そりゃ腰も痛むことながら、あれから良く寝たとは言え少々顔色も悪いはず。
 目なんて腫れぼったくなってるし、これじゃあ不調に気付くなって方が無理の話だが・・・これが風邪の症状だと仲間達が勘違いしてくれたにしても、それ以前に自分の体のあちこちにはゾロの残した痕が浮いているのだから、流石のサンジも慌ててしまった。
 体なんて診察されようものなら一発だ。
 ポンとチョッパーの肩に手を置くとそのまま引き摺るようにチョッパーを医療室に放り込み、自分もその中に体を滑らせる。
 ドアに診療中の札をしておけば、普段は通路として使われるここも人は立ち寄らないので甲板で診察されるよりは、幾らか安心も出来る。それでも体を診られるのは嫌だったので、机の上に紙があるのを見ると、サンジはサラサラと文字を綴った。
 たぶん、風邪ひいただけだ。 ・・・必要事項だけを簡単に記された紙を目に、チョッパーが怪訝そうにする。
「風邪?じゃあ、喉見せて?」
 仕方なく言われるがままに口を開くが、喉を見たチョッパーが更に怪訝そうにする。
「喉腫れてないし、見たところ声帯も大丈夫みたいだけど、細かく検査してみないことには・・・それにサンジ、咳とか鼻水とか頭痛とかはある?」
 咳と鼻水はないが、頭痛は最近ちょくちょくあるよなぁ・・・と思い、トントンと頭を指で指してから額に手を当てた。
 どうやらそれで理解してくれたらしくチョッパーは「頭痛があるんだね?」と確認のように聞いたので、取り合えず首を頷けておく。流石に頭の中で時々変な声がする・・・とまでは言えなかった。
 チョッパーはカルテらしきものにペンを走らせると、どことなく少し厳しい顔をしている。あ、やっぱマズかったかな・・・。
 この後、チョッパーの検査攻めに合うのかなぁ・・・とか、何となく嫌だなぁと感じていると、しかし珍しくチョッパーは早々と引き下がった。
「とにかく、一応風邪薬と頭痛を緩和させる鎮痛剤を出しとくけど・・・あと、採血だけさせてもらうから」
 てきぱきと作業を進めていくチョッパーに呆気に取られながらも腕を差し出せば、またもや手袋をしていなかったことを思い出す。と言ってもあの時、俺の体を診たはずのチョッパーには既にバレてしまっているのだろうが、俺の手首にまだ残る痣を見てもこの優しいトナカイはそんなこと一言も口にはしなかった。
 ただ、血を抜く際にチョッパーは、少し戸惑うように聞いてきた。
「サンジ・・・・・・痛くないか?」
 何が? とは、サンジには問えなかった。声が出ないために返しようもないこともあるが、それが血を抜くために腕に刺した針のことなのか、それともこの腕に残る痣のことなのか、あるいは心のことなのか。
 チョッパーの血を抜く細い針はあの時、散々俺に打ち込まれた薬らしきものを即座に彷彿させた。
 少し変な汗を掻く。貧血を起こしたように脳がクラクラしてくる。
 チョッパーの視線に気付き、強張っていた顔を見られたか? と、サンジはヘラヘラと笑ってみせた。
(大丈夫だ)とそう言うように、チョッパーの頭にまたポンと手を乗せてやればこのトナカイが幾分か落ち着くことを知っていて、サンジはグリグリとその頭を強く撫でてやった。

  
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