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微熱or・・・19

2012.12.21 17:28|Novels
 3日が過ぎた。
 ゾロが取ってきた薬草で作った薬が出来たとチョッパーから報告があり、ゾロは急いでチョッパーのところに顔を出した。
 あれからゾロはずっと、首輪を外す方法である、どうすればサンジと思考と感情が一致するのかと言うことを考え続けていたが、結局答えは分からないままである。
 確かにロビンの言うよう、思考と感情の一致と言う条件は口で言う程簡単でもなく、頭で考えるほど単純なものでもなかった。
 思考だけならまだしも、そこに感情が乗っかってくるのではどうしようもない。
 感情とは自らコントロール出来るものではないのだ。
 感情をコントロール出来るのなら、もっとこの世界は穏やかなものになり、生きること自体にそこまでの魅力もなくなるだろう。
 憎しみも愛情も、押さえつけることになるのだから。
 ゾロはこの間にも何度も眠り続けているサンジのところへ顔を出したが、サンジは起きることもなく、ゾロが近くにいる気配に気付いた様子もない。
「テメエの考えていることが俺には分からねえ・・・」
 何度その眠り続ける顔にそんな言葉を落としたのかも、分からなかった。
 ルフィ辺りは案外単純だから、分かることもある。だが、こいつは難解だ。
 そもそも、俺とは何もかもが違うのだ。
 考え方から、物の見方。
 何がこいつを傷つけ、何がこいつを温めるのか。
 どんなことで喜び、どんなことで悲しみ、どんな目で世界を見ているのか。
 どんな目で、こいつが俺を見ていたのか。
 いや、こいつは俺のことなど見ていなかったのかもしれない。
 行為の最中目を閉ざし続けていたこいつの拒絶ほど分かりやすいものはないのだ。
「サンジが寝ている以上、無理矢理飲ませるしかないんだけど・・・」
 粉状になった薬を片手にチョッパーがどうやってコックにそれを飲みこませるか迷っているようだった。
「点滴とかに使えるものじゃないし、経口摂取が一番効果がある・・・だけど、量が少ないから、吐かれたりしたら・・・」
 ああでもない、こうでもないとブツブツ言い続けるチョッパーの手からゾロは薬を奪い取る。
「要はこれをちゃんと飲ませればいいんだろう?」
「え、あ、うん・・・・・・」
 ゾロは右往左往しているチョッパーを尻目に、自らその薬を口に含んだ。
 驚いたチョッパーが制止の声をあげる前にグラスの水に手を伸ばし、薬を溶かすよう口に含ませる。
 薬の溶けた苦みがゾロの口内に広がった。
 ゾロはそのまま乾いたサンジの唇を割り開き自分の口を押し当て、その口の中に水に溶けた薬を流し込んだ。
 逆流を防ぐために暫くの間、唇は押し当てたままでいる。
 コクンとサンジの喉が鳴り、全て薬を飲み込んだのを確認してゾロは漸くサンジの口から唇を離した。
 離す間際に、乾いたサンジの唇にほんの僅かでも潤いを与えるよう、舌でペロリと舐める。
「飲ませたぞ?」
 呆然としているチョッパーに声をかければ、チョッパーは慌ててサンジの脈を計ったり、眼球の動きを調べたりし始めた。 
「異常はないみたいだけど・・・・・・」
 言葉を濁してチョッパーはサンジの顔を見据えた。
 その瞼が振動したり、コックの吐息に声が絡む様子はない。
「起きねえぞ?」                        
「直ぐに効果が表れるものでもないし、少し様子を見てみなきゃ分からないよ。それにサンジの症状は病気じゃないんだ。薬で治るって考える方がやっぱり無理がある」
 チョッパーの溜息が聞こえた。
 分かっていたことだ。
 ゾロもそこまで期待していたわけではない。
 ただ、他に思い当たる方法がなかったから、もしかしたら少しでも効果があるのではないかと言う薬草を獲りに行っただけで、実際そうすることしか自分には出来なかったのだ。
「ゾロ、俺、もう少し調べてみるよ」
 チョッパーは一通りサンジのデータを取ると、いそいそと部屋を出て行こうとする。
 だが、ドアに手をかけたところで、ふとゾロを振り返って、相変わらず状況に変化がない中だと言うのに、何だか嬉しそうに笑った。
「ゾロも本当にサンジのことが心配なんだね」
「そりゃ、一応はな・・・・・・」
「眠り姫の話が本当なら、ゾロの今のでサンジ起きるかもしれない」
 本気でこの医者は単なるおとぎ話でしかない、キスで起きる女の話を信じているのだろうか?
 純粋無垢な目は、疑うことを知らない船長のものと酷似していて正視しづらい。
「2人共喧嘩ばかりしてたけど、本当は仲いいんだな」
 チョッパーの言葉にそれはないだろう・・・と返したかったが、ニコニコした顔を見ていると別にむきになって否定する必要もないことのように思えた。






 サンジに薬を飲ませてから1日経ち、2日が経ち、3日がまた過ぎた。
 それからもサンジが目を覚ますことはなく、コックの目覚めを待ち続ける仲間達の顔にも徐々に焦りを通り越した苛立ちが滲み始めた。
 恐らく、起きないコックへ宛てたものではなく、何も出来ない自分自身に宛てたものだろう。
 眠り続けるサンジの一件に直接関係があった以上、ゾロの苛立ちは仲間達の誰が感じているものよりも深く大きくなり始めていた。
「あんた、人1人でも殺しそうな顔してるわよ。少し落ち着いたらどうなの」
 見兼ねたナミにそう声をかけられ、自分がそれ程までに余裕のない顔をしていたのだろうかと不思議に思うものの、自分で自分の顔を確認する術はない。
 鏡に映る自分は、自分自身をよく見せるために繕った自分しか映らず、本当の顔など映し出しはしない。
「このままこうしていても仕方ないし、そろそろ出航しようと思うの」
 思いがけないことを言いだしたナミにゾロは意識して眉間の力を抜き、その顔を見た。
「あいつを放っておくのか?」
「そうじゃないわよ。ただこの島にはこれ以上手がかりはないでしょう? ここで出来ることはやったわ」
 手がかり?
 コックにあの首輪をつけた奴等を探し出せばどうだろうか?
 ・・・そんなことは、コックが眠り続けている間、何度も考えたことだったが、結局そうしなかったのは、首輪を外す方法が実際には分かっていることにある。
 分かっていても、どうすればいいのか分からない。
 ロビンの仮説自体は他の皆もそれなりに耳に入れているようだった。
 なので、ナミも出航を促して来たのだろう。
 この島に留まったままで、何の状況変化も起こらないのなら、長居は無用だ。
 それよりは先の島へ進んだ方が、まだ確変も起こる可能性が高い。
 それに、もしゾロが少しでもサンジにあの首輪をつけた奴等のことを仲間達に漏らせば、あの時コックの身に何が起こったのか仲間達の耳に何らかの形で入ることもあるだろう。
 そんなことになれば、コックは酷く傷つくだろうと思った。
 実際にコックを犯したのは自分だったが、ゾロは自身の尊厳を守ることよりも、サンジのプライドを守ることの方が重要に思えた。
 それこそ自分が侵した罪の責任のように感じた。
 ゾロはナミの提案には何も返答を返さなかった。
 どのみち出航するかどうかを決めるのは船長であるルフィだ。
 ここは船長判断に任せる他ないだろう。
 無言でその場を立ち去れば、ナミが何かをぶつぶつ言う声が聞こえてきたが、聞こえなかったフリをしてゾロは男部屋に向かった。
 ボンクの中でまだコックは眠り続けている。
 覗き込んだ顔は昨日よりも更に色を失い、白い。
 それはあんなに赤かった唇の色さえも薄れさせる程にだ。
 あれだけ寝ているのに顔色がドンドン悪くなるなんて間違っている。
 どんな怪我も病気も寝れば治ると言う思考を持つゾロには、眠り続けることで、コックのウザったいほどの鮮やかさが失われていくことが信じられなかった。
 髪も肌も、ドンドン艶がなくなっていく。
 唇もやはり酷く乾いたままだ。
 顔を近づけてその唇をペロリと舐めれば、ほんの少しサンジの唇は潤う。
 そのまま、唇を思い切り付けて自分の唾液で潤し続けるが、それで僅かに潤った唇もゾロが唇を離せば直ぐに乾いてしまった。
 キスなどでは、こいつは起きない。
 眠り姫の話など、やはり嘘なのだ。
 端っから信じていたわけではない。むしろくだらない話だとばかり思っていたのに、結局自分には何も出来ることがなく、おとぎ話1つに頼るよう、何度も繰り返しコックにキスをしてしまう自分に心底呆れた。
 最初の頃は、唇に触れることすら何だか怖いと感じた。
 もし、このまま、また抑制が利かなくなったら?
 俺は眠っているコックですらも犯してしまうのだろうか?
 抱きたい、抱きたくない。
 俺はコックをどうしたのか・・・。
 その答えはまだ出ない。
「本当に俺は何も出来ねえんだな・・・」
 ポツリと呟いてみたら、余計に空しくなってきた。
 無力感は日を追うごとに露骨になっていく。
 クイナを失った日。
 仲間達を守るために、自分の命を盾にした日。
 結局どんな行動を取ろうと、自分は無力で、ちっぽけな存在であることに変わりはない。
 ゾロは何もすることがなく、何となくサンジの頬を撫でてみた。
 自分の手がかさついているのか、サンジの頬が荒れてきているのか分からないが、あまり滑らかさはない。
 触り心地がいいとは感じなかったが、何故か酷く、ただそれだけの行為にゾロは癒された。
 ふと、その時、サンジの吐き出す呼吸に乱れが生じた。
「おい、コック!!」 
 まさかと思い強く呼びかけてみれば、サンジの口がそろりと動いて、瞼が振動した。
「・・・ん・・・朝か?」
 億劫そうにサンジの目が開いて、真上のゾロを見た。
 だが、その目は完全に開くことはないまま、半分ぐらいの位置で不安定に留まり、また直ぐに閉じようとする。
「待て、寝るな!!!!!」
「・・・悪ぃ・・・眠い・・・・・・もう少し寝かせて・・・くれよ・・・・・・」
 もう少しも何も、もう一週間もこいつは眠り続けたままだ。
 冬場は冬眠する動物でもあるまい。
 あまりにも働き者である男が夜に寝る間も惜しんで料理ばかりしているので、仲間達が常に呆れた目で、それでも心配して、少しは休めばいいのに・・・なんてことを言っていたのはゾロも知っている。
 その時には、あいつが勝手にやっていることだから、放っておけ・・・と、ゾロはバカバカしく思いもした。
 だからこそ、こいつが少し長く寝るようになった時、漸くコックも肩の力を抜けるようになったのかと、ナミ辺りが密かに嬉しそうにしていたのもゾロは知っていた。
 他の仲間達もコックの眠りが少しずつ長くなり始める異常に気付きつつも、直ぐに露骨に騒ぎ立てるようなことをしなかったのは、働きすぎの男にちょっとした休養を与えてやりたかったせいもあったのだろう。
 やはりゾロはバカバカしいと思ったが、今はその気持ちが分からないでもないのだ。
 休める時は休めば良かった。
 きついならきついと。
 辛いなら辛いと、どうしてこいつは言わないのだろうかと、そのことに俺は苛立っていた。
 俺に組み敷かれながらも、文句1つ言わないことは、コックが日頃から無意識にやっていた痩せ我慢の一種なのだろうと。
 実際は俺がコックにその行動を強制させていたにも関わらず、それすらもこいつの好きでやることなら、俺がそのことを気にする必要はないことだ。
 そう思う自分もいれば、酷い罪悪感を感じる自分も、コックのそんなところに苛立つ自分もいて。
 俺は常にコックを見て怒りのようなものを感じていた。
 コックの方は俺を見て不快に思うことはなかったのだろうか?
 いつも言葉や態度では不快そうに、露骨な怒り、苛立ちをぶつけてきていたあいつと俺の、思考と感情は一致しない。
 だから、こいつは今も目覚めることが出来ず、こんな中途半端な覚醒だけを覗かせ、また眠ってしまおうとする。
「寝るな!!!! これは命令だ」
 同じ言葉をまた繰り返した。
 そんなことを突き付けたところで、今度はまた眠れなくなったコックが体温さえ下げてしまう程の、いつまでも安らかな眠りの訪れない覚醒の闇に囚われてしまうことは分かりきっているのに。
 眠り続けるコックと、眠ることの出来ないコック。
 そのどっちを見るのも嫌で、だけど、どちらかしか選ぶことの出来ない自分は一体どうすればいいのだろうか?
「・・・やだよ・・・俺はお前の目を見ねえ・・・それに約束・・・したろ・・・? 守れないんだったら・・・斬ればいいだけだ・・・痛みで俺は目を覚ます・・・・・・ゾロ・・・・・・」
 コックの目はまた閉じた。
 ただその口だけが動いて、安らかな寝息に変わる前に、強く、震えも何も一切持たない自信に満ちた優しさで・・・。
 ・・・悲しさで、声が促す。


「斬れ・・・よ」





 コックは再び眠りについた。

 もうそうするしか俺に出来ることはないのだろうか?
 ゾロは腰にある剣の1つを鞘から抜き取る。
 バランスが悪いのでサンジの体をボンクから下ろし床に転がすと、自分は立ち上がってその体を見下ろし、剣の切っ先をサンジの上に翳した。
 剣士としては全く、らしくもない、素人じみた構え。両手で剣の柄を握り込み、斬る場所の狙いを定める。
 どこがいい?
 腕以外・・・。
 足? 胸? 首? 顔か?
 肩・・・は腕の一部だろうか?
 斬って・・・本当にこいつは起きるのか?
 痛みが齎した覚醒など、本当に必要なのか?
 迷い。
 本当にらしくもない。
 ゾロは両手で握り込んだ剣に更に力を加え、一気にそれをサンジの足に突き刺そうとした。
 その瞬間だった。
「止めろ!!!!」
 震えた声が飛び込んで来たかと思えば、その行動を制止させるよう思い切ってゾロの背に飛びついてくるものがある。
 思わず腕を振り払った瞬間、その体が吹き飛んで後ろの壁に激突した。
 ウソップだった。
 ウソップはそれでも、ゾロの行動を咎めるように痛みに顰めた顔でありながらもゾロを睨みつけてくる。
 相変わらず臆病なところは残ったままだが、自分に自信がついた分、今では臆病を飲み込む勇気を持ち、ウソップはゾロにもはっきりと意見する。
「そうしちまったら、サンジはどうなんだよ!!! 俺は仲間の血に染まったお前なんか見たくねえよ!!!」
 こいつも優しい奴だ。
 コックのことを気遣うのと同時に、俺のことまで気にしている。
 確かに、ウソップの言う通りだと言う事は分かる。
 だが・・・。
「じゃあ、どうすればいい!!! どうすりゃこいつは起きるって言うんだ。テメエには分かるのか!」
 ゾロの怒鳴り声は空気を震わせ、ウソップの行動を金縛りのように押さえつけた。
「落ち着け、ゾロ・・・」
 辛うじて返って来た獣を鎮めるような声を無視して、ゾロは剣を振り下ろした。

 こいつが起きないのでは、俺にはどうにも出来ない。
 起きないんだ。
 そんな奴相手に、意思や感情を一致させることなど出来るはずもない。
 起きない。
 こいつはこうでもしなきゃ起きない。
 約束・・・した。
 斬ってでも起こせと・・・。そう突き付けてきたコックの言葉を了承した覚えはなかった。
 だが、それは一方的で強引なものでも約束は約束だ。
 そして、必ず起こすと言った自分の言葉にも責任はある。



 
 血が、飛び散った。

 コックの白い顔にそれは付着し、涙のように流れて床に沁みを作った。
 ゾロは血に塗れたサンジを見下ろしたが、その目が開くことはない。
 愕然としたゾロの目の前に不意に血よりも鮮やかな赤が飛び込んで来て、ゾロはそこで漸く、この場に今の今までいなかったはずの存在に気付いた。
 サンジに突きたてようとしたゾロの剣の刃を、ルフィの手が握り締めて止めていたのだ。
 コックの頬に付着した血は、ルフィの手から流れるものだった。
 コックはどこも傷ついてなどいない。
 覇王の気質を持つ船長の目に射抜かれて、流石のゾロも潰れそうな程の圧力を感じる。
 普通の人間だったら、死者こそ出兼ねない程のものだ。
 ルフィは握り込んだゾロの剣から手を離すと、床に転がったサンジの体をその腕に抱き上げた。
 そうして、自分の手から流れる血をサンジの唇に押し付け、なぞる。
 サンジの、色が薄くなりかけていた唇に強烈な紅が咲いた。

「これは俺の血だ。サンジのもんじゃねえ。ゾロのもんでもねえ・・・」

 自分がサンジの唇に塗りつけた血をルフィは舐めようとする。






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 何だ・・・この展開・・・orz


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