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幽闇永久の流れ星2

2012.10.28 20:54|Novels
 そこに通う途中にあるスーパーで適当に買い物を済ませた。
 ずっと酒のツマミばかりを作っていたが、今は純粋に晩の献立になるような極一般的な家庭料理を作るための買い物だ。
 なので、唐揚げだったりハンバーグだったり。
 家庭では定番のカレーでもいいわけで、むしろ変に凝った料理を作るよりもウケがいい。
 まあ、自分もやたらと手間暇かかる堅苦しい料理などよりも、そっちの方が好きなわけだが・・・。
 実家が洋食レストランであることや、自分の職業はすっかり棚にあげ、今日はカレーで決定だなとサンジは意気込んだ。
 カレーも使用する香辛料や具材に拘りはじめたらキリがないので、スーパーでお手軽なカレールーを買ってきた。
 勿論具材もジャガイモ、ニンジン、玉ねぎと定番のものに限る。
 肉だけは鶏にしようか、牛にしようか豚にしようかで悩んだが、好き嫌いはキノコ類だけだと言うので、一番安い鶏にしておいた。
 別に金に困っているわけではないが、節約しておくに越したことはない。
 勿論、嫌がらせではなく、単純に好き嫌いを克服させるための目的で、ごっそりキノコを買ってきたなどと口にすれば、あいつは真剣に涙目になって怒るのだろう。
 前に付き合っていた、ある人曰くの「どうしようもない大人」といい、成人こそしているものの、まだまだ子供の域を抜けない友人といい、どうして大人が食べ物の好き嫌いをするのだろうかと思う。
 そんなことを言ったら、お前だって未だに気持ちが悪い系の虫は苦手だろう? と、何だか次元の違う例えで返ってきたので、これだから同級生と言うものは性質が悪いのだ。
 自分の学生時代のことを知られていると言うのは案外恥ずかしいものだ。
 苦手なもの、好きなもの。
 当時はまっていたこと。あまり良く思っていなかったもののこと。
 勉強の出来具合や、親しかった友人関係の把握だけでなく、人の恋愛事情まで下手すれば知られている始末である。
 まあ、だからこそ今更隠すことなどありもしない、言って幼馴染のような関係であるのも確かで、その点は気が楽でもある。
 思い出話に花が咲いてしまえば、一晩中だって語り尽くすことも出来た。
 だが、その思い出話にあまり知りたくない相手の現在の様子などが交ざると、少しテンションが下がる。
 いつも通っていたマンションの前を通り過ぎ、向かうのは極普通のアパートだ。
 2階建てで部屋数もそう多くはない。
 1階、1番端の部屋のドアノブを捻ると、鍵はかかっていなくてすんなりと開いた。
 不用心だなとは思うが、何も年頃の、か弱い女の子が一人で住んでいるわけではないので、こんなものなのかもしれない。
 そういや、今まで足を運んでいたマンションはやたらと高級だったせいか、鍵もオートロックだったのだ。
 それに慣れていたせいもあって、余計に不用心に感じるのだろう。
「おーい、いるか?」
 そう声をかけて中に上がり込めば畳の部屋に転がっている足が見えた。
「おー、いるぞー」
 どうやら課題の途中で飽きが来て、小休憩の途中だったらしい。
 畳の上に参考書の類が幾つも散らばっていた。
 小休憩が昼寝にまで発展していたわけではなさそうだ。
「今日はカレーにするな」
 そう声をかけてサンジはキッチンに買ってきたものを置く。
 肉類だけを冷蔵庫に仕舞い、野菜はさっさと切ってしまおうと、椅子にかけておいたエプロンを身に着け包丁を握ったところで、部屋の方から露骨な溜息が聞こえてきた。
「どうした?」
「いや、何かよ~。こう言うのって男としては憧れの光景なわけだが、どうせなら彼女にやってほしいよな」
 そりゃそうだ。
 何が悲しくて成人した同級生の男2人がこんな恋人同士のような光景を繰り広げなければならないのか。
「ん? そういやお前彼女いたろ? 別れたのか?」
「お前と一緒にすんな! まだ続いてるっつーの」
「続いてるって、高校の時付き合ってた彼女とか?」
「当たり前だろう! それ以外の誰がいるんだよ」
 誰がいると言われても、あれから何年か経っているのだから、付きあっている相手が1人や2人変わっていても何の不思議もないはずだ。
 だが、確かにこいつは女をとっかひっかえするようなタイプでもない。
 一度付き合い始めたら一人の女性をずっと大切にしそうだ。
 それに女をホイホイ取り替える程モテるようにも思えない。
 高校の時はこいつに彼女が出来たってことが、心底不思議でならなかった。
 しかも、自分の記憶が正しければ、確か相手はお嬢様学校の子だったはずだ。
 一度写真を見せてもらったことがあったが、清楚で大人しそうな可愛い子だった。
 その時、何でお前にこんな可愛い彼女が出来るんだよ! と散々悔しがったのは自分だった。
 当然本気で悔しく思ったわけじゃなく、単なるその場のテンションに乗っかっただけでもあったのだが、普通に女の子とお付き合い出来るって時点で俺にとっては羨ましいことの1つだったし、俺だって普通の男女の恋愛ってものをしてみたかったなぁとは思う。
「へー、すげえな。それだけ長く続けられるってのも。もう何年目だ?」
「3年ちょっと」
 付き合いとしては長い方だろう。
 恋人同士の付き合いとなれば、尚更のことだ。
 自分が一番長く特定の誰かと恋人としての付き合いを続けることが出来たのは丁度1年。
 その1年も半年ぐらいは、相手の顔も見れなくなってしまうぐらい酷いものだった。
 最後あたりはほとんど仮面の恋人だったのだ。
 それでも、まだ、自然消滅とならなかっただけマシだったのかもしれない。
「どうやったらそんなに長く1人の相手と続けることが出来るんだよ?」
 俺にとっては、それこそが永遠の課題のような気がする。
「どうやったらって、こればかりはやっぱり相性とか縁じゃねえか? 別れちまうってことは結局そう言う運命になかったってことだろう」
 案外ロマンチックなことを言う。
「運命か・・・じゃあ、俺みてえなのは誰とも結ばれず放浪する運命なのかもな」
「おいおい、まだ20代なったばかりで自分の運命決め付けるなよ。それにお前、婚約したってナミが言ってたぞ。あ、もしかして、もう妻帯者とか言わないよな?」
 何でそのこと知られてんだ? と思わず首を傾げかけたが、そう言えばある男と条件を上げた上で婚約なんて関係を結んだ直後ぐらいにナミさんに会って、そう言う話をしたような気がする。
 ナミさんに伝えれば他の友人達の耳にも直ぐに入るだろうと、その時思ったことは確かだし、それを狙ったのもあった。
 だが、別にこいつに知ってほしいと思ったわけでもない。
「そんなもんとっくに解消したよ」
「は? 婚約ってそんなに簡単に解消出来るもんなのか? それに俺がナミからその話聞いたのって最近のことだぞ」
 驚いた声が直ぐに返ったが、そんなに驚くようなことだろうか?
 最近の世の中じゃ結婚したと思ったら半年ぐらいで離婚すると言うカップルだって普通に多い。
「お前の言うところの運命の相手じゃなかったんだろう」
 サンジは取りあえずそう片付けて、一旦話を終わらせた。
 すっかり話に夢中になってしまい、晩飯を作る作業はちっとも進んでいない。
 漸く野菜の皮を剥き、まな板を取り出して野菜を刻み始める。
 包丁の音がリズムを刻み始めてから、料理の邪魔をしたら悪いと思ったのか、友人はもう話しかけてこなくなった。
 さっきまで暖簾の下から見えていた寝そべった足が見えなくなっているので、小休止は止めにして、再び課題にでも取り掛かり始めたのかもしれない。
 そう言えば、成人したとは言え、まだ大学生なんだよな・・・と、学生であるそいつの身分を少々羨ましくも思った。
 こいつと同じで、高校時代の友人達はほとんどが大学に進学した。
 俺は将来の方向性が随分と前から確定していたし、勉強に然程興味も持てなかったので料理関係の専門学校に卒業後は入ったのだが、それも2年で卒業したので、4年制大学に進んだ連中より少しだけ先に社会人と言うものになってしまったのだ。
 大学に進学しなかったのは、俺とルフィぐらいだ。
「そういや、ルフィがな、こっちに戻って来てるらしいんだよ」
 たった今、ルフィのことを考えた矢先、その名前が急に出て来た。
「あー、あいつ確か卒業するなり、世界を見て回るんだーとかバカげたこと言って、本当に海外留学しちまったんだっけ?」
「そうそう。ずーっとお前と一緒で連絡取れなかったんだけどよ。この間、ナミの奴が連絡してきて、すっげー、電話越しに怒ってんの」
 ピタリと包丁を扱う手を止め、サンジは畳の部屋に駆け込んだ。
「何でお前がナミさんと仲良く連絡取り合ってんだよ!」
「あーストップストップ、サンジくーん!!・・・って、お前だってナミの携帯番ぐらい知ってるだろうが!」
「うっ、そりゃ知ってるけどよー。ナミさんってば、俺が婚約したって言ったせいか、気を使ってあまり連絡してこないんだよー」
「ハハッ、お前変わってなくて、何か嬉しいな。婚約したって聞いた時は、1人だけすっかり大人になっちまったみたいで寂しく感じたけどよ・・・」
 笑い声に嬉しくなって、サンジは感動したとばかりにそいつの肩に飛びついた。
「うわっ、サンジ重い、重い!」
「あー、いいな。やっぱお前といると落ち着くわ」
 髪が高校の時よりも伸びていて今は肩を軽く追い越している。
 長い鼻は相変わらず縮むことなく、その特徴が本当に懐かしくてやっぱり嬉しくなる。
「サンジくーん・・・本気で重い・・・潰れる・・・」
 ぐえっと蛙を潰したような声があがって、サンジは慌てて腕を離した。
 どうやらいつの間にか首まで絞めてしまっていたらしい。
 こいつとはどんなにスキンシップを重ねたって、決して変な雰囲気にならないところが気に入っている。
 本当の本当に友人としてこいつは俺を見てくれているし、俺もその友人としての関係を壊したくないのだ。
「そう言えばよ、お前・・・その・・・俺の親父とはどう言う知り合いなんだよ?」
 急に話が変わった。
 恐らくこのことをずっと聞きたかったのだろう。
 俺がここに連れて来られてから、一週間程もう経ってしまっているので、質問のタイミングを逃していたのかもしれない。
 確かにそれを考えると今は幾分か聞きやすい雰囲気でもあったのだろう。
 どう言う知り合いか? と言われても、俺も恋人のマンションから拉致られてここに連れて来られたまでで、特に詳しいことは分からないままなのだ。
 分かっていることと言えば、恋人だった男の友人であり同僚であると言うこと。
 とにかくあいつと親しい間柄の奴で、こいつの父親だったってことだけだ。
「よく分かんねえ」
「は?」
 呆気にとられた目にサンジは苦笑した。
「だってよ、ほんと行き成り俺の目の前に現れて、俺の意思関係なく俺をここに連れて来たんだぜ?」
「じゃあ、初対面ってことか?」
「ああ、そう言うもんだな。何やってる人なんだ、親父さん?」
「俺が知るかよ」
 急に不貞腐れたような声が返る。
「は? テメエの親父だろう?」
「親父って言ってもなぁ・・・俺が小さい頃、家を出て行ったっきりずっと帰って来なくてよ。顔現し始めたの最近っつーか・・・とにかく家とか母ちゃんとか全部放っておいて勝手な奴なんだよ」
 サンジの目から見れば、こいつの父親は俺の周りの大人共と比べても、唯一の常識人と言うか、極々普通の人間に見えたのだが、やはり各家庭家庭でいろいろ事情があるらしい。
 俺の周りのどうしようもない大人がこれでまた1人増えたわけだ。
「それにしても、何で親父の奴、サンジをここに連れて来たんだろうな?」
 言われてサンジも少し考えてみたが、原因は1つしか思い当たらない。
「・・・あー、たぶんそれな・・・俺が二股かけてたのがバレたんだよ。で、そいつ等から俺を引き離そうとしたんじゃねえの?」
 ぎょっとした顔がサンジを見る。
「二股ってお前、まだそんなことやってんのかよ?」
 責めるような色合いを持った声にサンジは一笑した。
「軽蔑するか?」
「するに決まってんだろうが!!」
「ハハッ、お前は正直でいいな」
 面白おかしく嘘を言うことが昔から得意な奴で、明らかに嘘だと分かることをいつも自信満々にこいつは話していた。
 自分は嘘を吐くのが得意だ! と豪語していたが、そう宣言する奴ほど、実際はとても正直で素直なのだ。
 本当の嘘を吐く奴は、表情も何も変えず平気な顔で、嘘を本当のことにするよう単調に声に出す。
 淡々と言葉を並べ立てる。
 だからこそ、嘘吐きだと自分でいいながらも、分かりやすいこの男のことをサンジは昔から気に入っていた。
 きっと他の誰と一緒にいるよりも、気が楽な相手かもしれない。
「さーてと、料理の続きでもするかな」
 ついついまた話し込んでしまった。
 野菜を切っている途中だったことを思い出し立ち上がれば、暖簾を潜ったところで背中から声がかかった。
「あのよ、サンジ・・・今のはな・・・そう言う普通の意味の軽蔑とかじゃなくてよ・・・・・・つまりは、そのな・・・・・・」
 言いにくそうなしどろもどろな言葉の先をサンジは立ち止まって、しかし振り返ることはせず、待った。
「・・・あんま、自分で自分を傷つけるのとか、もう止めろよな。俺はお前のそう言うところ、見てて嫌なんだよ。それを軽蔑するって言ってんだ。二股とかそう言うのでもお前が幸せだって言うならいいんだ。だけど、そうじゃないだろ?」
 サンジはグッと拳を握る。
 泣くのを我慢している時、あまりにも優しい言葉をかけられると、余計に泣きたくなる衝動と似たものがジワジワとこみ上げかけていたからだ。
「・・・・・・お前さ、あんま人の心配ばかりしてねえで、自分の心配しろよ。俺みたいなの家に上がり込ませてちゃ、彼女も不安に思うだろ・・・」
 暖簾を漸く潜る。
「何で、友達1人家に呼ぶのに彼女のこと気にしなきゃなんねーんだよ!!! お前、俺がお前に何かするとか思ってんのか!!!」
 珍しい怒鳴り声に胸が詰まった。
 ああ、駄目だ、泣きそうだと感じた瞬間を隠そうと、必死にサンジも声を張り上げた。
「そんなこと思ってねえよ!!! ただ・・・誰かに心配されんのはもう嫌だ!!!」
 こんなこと言ったら余計に心配させてしまうことになる。なのに言葉を咄嗟に選ぶことが出来なかった。
 これだから、昔からの友人と言うのは嫌なのだ。
 何もかも知られている気分になってしまう。
 見透かされてしまっているような気がしてしまう。
「・・・悪い・・・カレー作るな・・・・・・」
 直ぐに冷静に冷え切って行く頭を振って、サンジは再びキッチンに立った。
 そいつも、それ以上何を言ってくることもなく、大人しく腰を据えてまた課題を始めたようだった。
 結局、俺とこいつとではまともな喧嘩にすらなりはしない。
 瞬間的な激情が互いに走ったことだけは確かだったのに、こうして声を張り上げることがあっても、2人して同時に引いてしまう。
 それが、こいつと俺の関係の、いいところだとも思う。
 包丁の音。
 その中に交ざるノートにペンを走らせる音。
 いつも通りの夕暮れが近づいている。
「・・・ルフィがな・・・サンジに会いたがってたんだ。今度会ってやれよ・・・」
 暫く沈黙が長引いていたが、急にそいつがそんなことを言いだした。
 ルフィが?
 俺に? 何で? と思いもしたが、サンジは何も聞かずに頷いた。
 高校を卒業してから、学生時代の友人となんてそう会う機会もなかったはずなのに、今頃になって会わなくてはいけない方向に引力が発生しているような気がしてならない。
 これも縁だとか、運命だとか言うものなのだろうか?







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 幽闇~ではもう続ける気はなかったんですが、別タイトルで書いてたら幽闇~を割と引き摺ったので、続きみたいな形で書いてみました。
 特にこれと言った展開はないんですが、ただ普通の友人関係の会話を書いてみたかっただけ。
 そして、この後、木漏れ日~に繋がるわけです。


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